黒い牝豹M

黒い牝豹M

『黒い牝豹M』（くろいめひょうえむ）は、1974年（昭和49年）8月14日に劇場公開された日本映画です。日活株式会社が製作・配給を手がけたこの作品は、バイオレンスアクションのジャンルに位置づけられます。メガホンを取ったのは蔵原惟二。そして主演には、当時「東映ポルノ」の看板スターとしてその名を知られていた池玲子が迎えられました。タイトルが示す通り、物語の中心人物は、圧倒的な戦闘能力と冷徹さを持つ謎めいた女殺し屋「M」です。彼女が巨大な犯罪組織の内部で巻き起こる激しい抗争の渦中に身を投じ、その凄まじい活躍が描かれます。

物語の概要

広域指定暴力団である「国栄会」は、関西を本拠地として強大な勢力を誇っていました。しかし、その組織内部では不正が進行していました。国栄会の一員である中田は、横浜で傘下企業「速水興業」を経営する社長・速水と共謀し、組織に収めるべき上納金を密かに着服していたのです。

不正行為の発覚を恐れた中田が、共謀関係にあった速水に対して横領から手を引くよう迫ったことから事態は急変します。速水はこれを拒絶し、邪魔になった中田を殺害。これによって速水は事実上、国栄会本家との決定的な対立関係に突入します。

組織の資金が不正に流用されていることに気づいた国栄会の会長は、裏切り者への粛清を決定。その執行者として白羽の矢が立ったのが、伝説的な腕前を持つ女殺し屋Mでした。Mは会長の命を受け、速水の抹殺を遂行するため横浜へと向かいます。

速水の潜伏先に辿り着いたMでしたが、速水は彼女の襲撃を予期しており、巧みな罠を仕掛けていました。Mは速水自身ではなく、用意周到に仕立てられた替え玉を相手にしてしまうのです。そして、その隙を突いて速水の配下たちがMに襲いかかります。多勢に無勢、激しい死闘の末、Mは深手を負い、満身創痍となります。絶体絶命の危機に瀕したMでしたが、その時、意外な人物が現れます。それは、他ならぬ速水の妻・和子でした。和子は傷ついたMに救いの手を差し伸べるのです。組織の掟と裏切り、そして予期せぬ人間の情が交錯する中、Mの追跡劇は思いがけない方向へと展開していきます。

キャスト

本作に登場する主要なキャストは以下の通りです。

M: 池玲子（東映）
- 凄腕の女殺し屋であり、物語の主人公。
速水: 成田三樹夫
- 横浜の速水興業社長で、国栄会の上納金着服に関わる。
川島: 今井健二
- 速水や中田と関連する人物と思われる。
和子: 森秋子
- 速水の妻であり、Mを助ける鍵となる人物。
中田: 石橋雅史（特別出演）
- 国栄会の一員で、速水と共に上納金着服を企てる。

この他、川鍋智香、高橋明、溝口舜亮、木島一郎、北上忠行、佐藤了一、谷文太、桂小かん、森みどり、岡みちるなど、多数の俳優が出演し、物語世界を彩っています。

スタッフ

本作の製作に関わった主なスタッフは以下の通りです。

監督: 蔵原惟二
脚本: 宮下教雄、中島紘一
企画: 松岡明、伊地智啓
音楽: 小沢典仁
撮影: 畠中照夫
美術: 川船国彦
編集: 鈴木晄

蔵原惟二監督は、日活において数々のアクションや青春映画を手がけたベテランであり、本作でもその手腕を発揮しました。脚本は宮下教雄と中島紘一が共同で担当。音楽は小沢典仁が手がけ、作品の緊迫感を高める上で重要な役割を果たしています。撮影は畠中照夫、美術は川船国彦、編集は鈴木晄がそれぞれ担当し、作品の完成度を高めています。

その他

本作は公開時に『妹』と併映されました。日活がこの時期に製作したアクション映画として、当時の映画界の一側面を示す作品と言えるでしょう。特に主演の池玲子は、東映での活躍から日活作品への出演となり、当時の俳優の活動範囲やジャンル間の交流を示す例としても興味深い作品です。

『黒い牝豹M』は、女殺し屋を主人公にしたハードボイルドな設定と、組織の裏切りや抗争を描くクライムサスペンスの要素を併せ持っており、日活アクションの一つの系譜に連なる作品として、その存在感を放っています。

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