黒住宗忠

黒住宗忠（くろずみ むねただ）

黒住宗忠は、江戸時代後期の神道家で、教派神道の一つである黒住教の開祖として知られています。安永9年（1780年）に備前国御野郡中野村（現在の岡山県岡山市北区上中野）で生まれ、嘉永3年（1850年）に71歳で亡くなりました。幼名は権吉といい、親孝行な人物として地元で評判でした。その孝行ぶりから「黒住の孝行息子」とまで呼ばれるほどでした。神職を継いでからは、左京宗忠と改名しました。

生涯

宗忠は、文化9年（1812年）に実母と実父を相次いで亡くし、深い絶望に陥りました。その悲しみから体調を崩し、自身も病に倒れてしまいます。しかし、文化11年（1814年）の冬至の朝、太陽を浴びる中で天照大神と一体になるという神秘的な体験をしました。この「天命直授」と呼ばれる体験によって、宗忠は自らの使命を悟り、病も癒えたとされています。この出来事を境に、宗忠は宗教活動を開始し、人々に教えを説き、病に苦しむ人々を救済しました。

宗忠の教えは、太陽信仰を基盤とし、天照大神との一体感を重視するものでした。彼は各地を巡りながら布教活動を行い、多くの人々を教えに導きました。その活動は37年にも及びました。嘉永3年（1850年）に亡くなると、その信仰はさらに広がり、皇室や公家の中にも宗忠を信奉する者が多く現れました。その結果、宗忠の死後、神道の権威である吉田家から「宗忠霊神」の神号が贈られ、後に「宗忠大明神」へと昇格しました。

文久2年（1862年）には、京都の神楽岡に宗忠神社が創建され、宗忠を祀る神社として、多くの人々が参拝に訪れるようになりました。この神社は、慶応元年（1865年）に孝明天皇によって勅願所となり、翌年には従四位下の神階が贈られました。孝明天皇が勅願所としたのは宗忠神社のみであり、その権威の高さがうかがえます。

黒住教

黒住教は、宗忠の教えを基盤とする教派神道の一つです。太陽を神格化し、その恵みに対する感謝の念を大切にしています。また、人々が天照大神と一体になることを目指す「日拝」の行法を重視しています。黒住教は、江戸時代後期に成立した後、明治時代以降も発展を続け、現在に至っています。

宗忠の著書や教えは、現代においても多くの人々に影響を与えています。彼の教えは、困難な状況でも希望を失わず、前向きに生きるための指針となるでしょう。

参考文献

『生命（いのち）のおしえ―民族宗教の聖典・黒住教』 : 東洋文庫 319。道歌と書簡集、黒住宗忠 (村上重良校注)
『黒住宗忠』: 人物叢書 歴史学者によるオーソドックスな伝記、著者: 原敬吾
『太陽の神人 黒住宗忠―その超逆転発想は、激動の時代を生き抜く処方箋』 : 著者: 山田雅晴
『哲人宗忠』: 著者: 延原大川
『眞人宗忠』:著者:延原大川
『日本神人伝―日本を動かした霊的巨人たちの肖像』: 著者: 不二龍彦
『近代日本霊異実録』 : 写本のみ伝わってきた「黒住教幽冥談」を収録、著者: 笠井鎮夫
『宗忠講話』:「黒住教読本」（上・下）の合本に「教祖神讃詩」（川上忠晶撰)「教祖宗忠神小傳」（星島良平述）を加えて編集刊行したもの、著者:河本一止（昭和33年3月5日発行、大道社刊)

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