黒島天主堂

黒島天主堂は、長崎県佐世保市に属する黒島にあるカトリック教会で、その正式名称は黒島教会です。至聖なるイエズスの聖心教会、イエスのみ心教会という別名も持ち、地元の人々から深く愛されています。この教会は、長崎におけるキリスト教の歴史を物語る重要な場所として、国の重要文化財に指定されています。

歴史

潜伏キリシタンの時代から

黒島は、九十九島最大の島で、江戸時代の厳しい弾圧を逃れた隠れキリシタンたちが移り住んだ場所です。1865年に大浦天主堂で「信徒発見」の知らせが黒島にも伝わると、信者たちはすぐに長崎へ赴き、プティジャン神父に自分たちが潜伏キリシタンであることを告げました。その後、禁教が解かれる前に、島の信者全員がカトリックに復帰しました。

教会の誕生と発展

1878年、ペルー神父が黒島に赴任し、和洋折衷の小さな教会を建てましたが、すぐに手狭になりました。1897年には、マルマン神父が新しい聖堂の建設のために着任し、自ら設計を手がけました。旧聖堂を取り壊し、同じ場所に建てられた新聖堂は、1902年に献堂式が行われ、完成を見ました。

修復と保存

その後、1982年から1983年にかけて、レンガの張り替えや屋根の葺き替えなどが行われました。1991年には、畳敷きだった聖堂内が椅子式に変更されました。2008年頃からは、老朽化が目立つようになり、2013年から翌年にかけて耐震診断を行った結果、耐震基準を満たしていないことが判明。そのため、耐震補強工事と合わせて保存修理工事が実施されました。

建築

バシリカ様式とロマネスク様式

黒島天主堂は、黒島のほぼ中央に位置し、北向きに建てられています。三廊式バシリカ型教会堂で、切妻造、瓦葺きの屋根が特徴です。建物の上層部分は木造下見板張り、下層部分は煉瓦造となっています。側面は、アーケード、トリフォリウム、クリアストーリーの三層構造になっており、外観はロマネスク様式を基調としています。

細部へのこだわり

ファサードには、ペディメント下にバラ窓が設けられ、正面には窓は設けられていません。壁面には、ブラインド・アーケードやブラインド・アーチが施されています。入口上には、四角錐形の屋根を持つ鐘塔が立っています。側廊の壁面には、ステンドグラスが嵌め込まれた半円アーチの窓が設けられ、クリアストーリーにもステンドグラスが使われています。会堂部は、当初は板張りに畳敷きでしたが、1991年に椅子式に変更されました。

素材へのこだわり

煉瓦は、経費節減のため島内で焼かれ、不足分は島外から購入されました。基礎には、黒島特産の御影石、祭壇の床には有田焼のタイルが使われています。これらの素材からも、この教会が地元の資源と技術を活かして建てられたことがわかります。

特徴

貴重な教会建築

黒島天主堂は、明治時代に外国人神父の指導によって建てられた本格的な教会堂建築として、その様式がよく整っており、貴重な遺構です。煉瓦造の教会は全国に17棟しかなく、そのうち16棟が長崎県にある中、黒島天主堂は4番目に古い建物です。

多層構造

黒島天主堂は、単層構造が主流だった時代に、長崎の大浦天主堂と同じく3層構造を採用した、先進的な教会建築物です。この多層構造は、高い技術を必要とするため、建築当時の技術力の高さを物語っています。

マルマン神父の業績

マルマン神父は、手先が器用で、天主堂の説教台やシャンデリア、洗礼台の彫刻は神父自らの手によるものです。また、天主堂に飾られている像の多くは、神父が資金調達のためにフランスに戻った際に購入してきたものと言われています。聖鐘はフランス製です。

地域とのつながり

クリスマス・イヴには、島中のカトリック信徒が天主堂に集まり、ミサが終わると婦人会による炊き出しが行われます。ぜんざいやケーキが振る舞われ、地域住民の交流の場となっています。

アクセス

所在地

〒857-3271 長崎県佐世保市黒島町3333番地

交通手段

相浦桟橋から黒島旅客船のフェリーで約50分、黒島港から徒歩約30分です。佐世保駅からは、車で約30分で相浦桟橋に到着します。バスの場合は、西肥バス（させぼバスも含む）で約40分、松浦鉄道西九州線では約30分です。

注意事項

黒島内には公共交通機関はありません。

その他

登場作品

黒島天主堂は、アニメ「坂道のアポロン」や映画「きみの色」の舞台としても登場しています。

世界遺産

2018年には、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一つとして世界遺産に登録され、その価値は世界的に認められました。

黒島天主堂は、その美しい建築様式と歴史的背景から、多くの人々に愛されています。訪れる際には、この場所が持つ歴史と文化を感じ、静かに祈りを捧げてみてはいかがでしょうか。

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