黒川治愿

黒川治愿：愛知県の発展を支えた技術者

黒川治愿（くろかわ はるよし）は、19世紀後半に活躍した日本の技術者です。美濃国（現在の岐阜県）に生まれ、愛知県技師として、数々の土木・治水事業に携わりました。彼の業績は、愛知県の近代化に大きく貢献し、その名は今もなお、地域の人々に語り継がれています。

生い立ちと治水への関心

1847年、黒川治愿は美濃国厚見郡佐波村（現在の岐阜県岐阜市柳津町）で、地元の庄屋である川瀬文博の次男として生まれました。幼名は鎌之助と言いました。幼少期から学問に励み、長じて家業を継ぎましたが、佐波村は境川の氾濫に長年悩まされており、治水への強い関心を抱くようになりました。この経験が、後の彼の技術者としての道を決定づけたと言えるでしょう。

技術者としてのキャリア

1868年、黒川治愿は京都に遊学し、その後、仙洞御所に出仕します。その後、御所御用人の黒川敬弘の養子となり、黒川姓を名乗るようになりました。1872年には香川県吏、1873年には名東県吏として地方行政に携わった後、1875年に愛知県吏となり、土木事務を担当することになります。この時、彼は、安場保和県令の計画に基づき、堀川の上流にあたる大幸川を延伸し、矢田川を伏越で潜らせて庄内川に接続、さらに新木津用水を庄内川まで繋ぐという大規模な運河計画に携わりました。1877年には、矢田川までの区間が完成し、この部分は後に黒川の名で呼ばれるようになりました。この一連の事業は、彼の技術者としての才能を世に知らしめるきっかけとなりました。

愛知県のインフラ整備への貢献

1880年、黒川治愿は愛知県の初代土木課長に就任します。これを機に、彼は数々の土木事業に携わりました。主なものとしては、立田輪中での鵜戸川延長、明治用水開削、入鹿池堰堤の改修、木津用水閘門・乙川改修、堀川・郷瀬川改修、宮田用水原樋増築などが挙げられます。これらの事業を通じて、愛知県の農業生産性の向上や水害対策に大きく貢献しました。また、1878年に東海道の豊川にかかる豊橋が損壊した際には、仮橋架橋の功績で宮内省から賞されました。1883年には、太政官から金50円を賜っています。

鉄道ルート変更への貢献

治水関連の功績だけでなく、黒川治愿は、1884年に名古屋区長の吉田禄在らと共に、中仙道ルートで計画されていた鉄道を東海道経由に変更するよう陳情し、変更の決定を得ています。この決定は、後の愛知県の発展に大きな影響を与えました。

引退と晩年

1885年に愛知県技師を退官したものの、1887年には再び愛知県一等属として復帰しますが、病気のため間もなく退官。その後は農業をしながら余生を送りました。1897年5月29日、名古屋市南久屋町の自宅で生涯を閉じましたが、その日は奇しくも誕生日と同じ日でした。故郷の佐波村に葬られ、1899年には政秀寺に彼の業績を讃える碑が建立されました。この碑は、後に千種区の平和公園に移設され、現在も彼の功績を伝えています。

黒川治愿の家族

黒川治愿の養子である黒川耕作は、1875年に川瀬三九郞の四男として生まれ、4歳の時に治愿の養子となりました。1897年に家督を相続し、東京帝国大学文科大学国史学科を卒業後、愛知県立第三中学校教師を経て、東都貯蓄銀行取締役となりました。資産家であり高額納税者であった彼は、金城女子専門学校の講師も務めました。先妻は岩村高俊の娘つね、後妻には陸軍少将・細野辰雄の妹、寿を迎えました。長男の黒川晴次郎は愛知県第一中学校の教師で、岳父は草間滋でした。

まとめ

黒川治愿は、その生涯を通じて、愛知県のインフラ整備に多大な貢献をしました。彼の功績は、今日の愛知県の発展の礎となり、今もなお、多くの人々に尊敬されています。治水技術者としてだけでなく、地域社会の発展にも尽力した彼の足跡は、歴史の中に深く刻まれています。

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