黒瀬町 (東広島市)

東広島市黒瀬町（ひがしひろしましくろせちょう）

東広島市黒瀬町は、広島県のほぼ中央部に位置する東広島市の中でも、その南西にあたる地域です。西側では広島市、南側では呉市とそれぞれ境を接し、東側は東広島市の中心部である西条町と隣接しています。かつては広島県賀茂郡の黒瀬町として独自の歴史を歩んでいましたが、2005年に行われた周辺市町との合併により東広島市の一部となりました。

地理と自然

町の周囲は標高の高い山々に囲まれており、特に小田山（719.1m）や岩幕山（352.2m）、石岳山（559m）など、多様な山容を見ることができます。これらの山々から流れ出る水を集め、町内には黒瀬川を主軸として、竹保川や光路川など複数の河川が流れ、豊かな自然景観と水資源をもたらしています。町内には合計32の町丁字が存在し、そのうち17には旧町名に由来する「黒瀬町」の冠称が用いられています。

自然を満喫できるスポットも点在しています。標高240mの龍王山に整備された龍王山総合公園は、散策路や多様な広場に加え、「サクラの丘」などがあり、自然観察やレクリエーションに適しています。公園周辺では、カスミサンショウウオやイシモチソウといった珍しい動植物も確認されています。黒瀬川支流の上流に位置する黒瀬ダム周辺や、黒瀬生涯学習センター、龍王山総合公園などでは、春には美しい桜を楽しむことができ、黒瀬川沿いには芝桜も植えられています。また、人工温泉ながら人気の高いスーパー銭湯「雲母の里」は、地域の憩いの場となっています。

産業と経済

黒瀬町は都市近郊に位置する利点を活かした産業が特徴です。第一次産業では、優良な農地を活かした都市近郊型農業を推進しており、野菜や米などが地元の大型スーパーでも販売されています。農業参入企業の誘致や、肉牛を中心とした畜産業の振興も行われています。特産品としては、地元金光酒造の日本酒をはじめ、黒瀬の牛肉、なす、ぶどう、黒瀬のたこ焼きなどが挙げられます。

第二次産業では、黒瀬工業団地に多くの工場が集積しており、多様な分野の製造業が町の経済を支えています。第三次産業も活発で、町内にはゆめタウン黒瀬やビッグハウスなどの大型商業施設、複数のスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどが立地し、住民の生活を支える商業機能が充実しています。黒瀬商工会が地域の経済活動を支援しており、広島中央農協の拠点も設けられています。金融機関は広島銀行、もみじ銀行、広島市信用組合、呉信用金庫が支店を構えています。郵便局も複数設置されており、生活の利便性が高い地域です。

行政サービスと施設

行政サービスは東広島市役所黒瀬支所が担っており、地域振興、福祉保健、産業建設など多岐にわたる業務が行われています。警察機能は東広島警察署黒瀬交番が、消防は東広島消防署南分署がそれぞれ管轄しています。

町内には住民の健康と福祉を支える黒瀬保健福祉センターがあります。医療施設も充実しており、内科、消化器科、脳神経外科、小児科、耳鼻咽喉科などの診療所や病院に加え、専門性の高い国立病院機構賀茂精神医療センターも立地しています。歯科医院も複数あります。

文化・交流施設としては、東広島市立黒瀬図書館、多目的ホールを備えた黒瀬生涯学習センター、黒瀬児童館、東広島市黒瀬文化会館などがあり、学習や地域交流の機会を提供しています。運動・体育施設では、黒瀬屋内プール、体育館や艇庫を持つ東広島市黒瀬B&G海洋センター、グラウンドなどが整備されており、スポーツ活動を促進しています。

教育機関

黒瀬町は教育機関が非常に豊富です。公立保育所や認定こども園が複数あり、幼少期の教育環境が整っています。小学校は町内に5校（板城西、上黒瀬、下黒瀬、中黒瀬、乃美尾）あり、中学校は東広島市立黒瀬中学校があります。高等学校としては広島県立黒瀬高等学校が立地するほか、私立の武田中学校・高等学校も近隣にあります。特別支援教育を担う広島県立黒瀬特別支援学校も町内に設置されています。高等教育機関としては、広島国際大学の東広島キャンパスがあり、多くの学生が集まる活気をもたらしています。

交通網

交通アクセスとしては、高速道路のE75東広島呉自動車道が町内を縦断し、大多田インターチェンジと黒瀬インターチェンジが設置されています。これにより、山陽自動車道や国道2号、また呉方面へのアクセスが容易になっています。一般道路では、国道375号が南北を結ぶ主要幹線であり、複数の県道も地域内の移動や周辺自治体との連携を支えています。公共交通機関としては、JRバス中国の西条線が西条駅方面や呉駅方面へ運行されているほか、広島国際大学方面への路線もあります。また、地域内の移動手段として、黒瀬さくらバスというコミュニティバスが運行されており、住民の足となっています。

文化財と観光

歴史と文化の側面では、国登録有形文化財に指定されている金光酒造の建造物群が特筆されます。酒蔵としての歴史を感じさせる建造物が複数指定されています。また、東広島市指定の重要文化財として、寺院に伝わる襖絵や厨子、神社に奉納された俳諧額や棟札、懸仏、史跡としては保田古墳群や岩幕山古墳、天然記念物として中黒瀬のセンダンなどが大切に保存されており、地域の歴史や文化を今に伝えています。観光スポットとしては、陶芸体験ができる登り窯を持つ「陶芸の里 保田窯」があり、映画のロケ地にもなりました。自然と親しめる黒瀬ダムも景勝地の一つです。

文化と名物

地域では年間を通じて様々な祭事や催事が行われ、夏の黒瀬ふれあい夏祭りや黒瀬町健康福祉まつりなど、地域住民の交流を深める機会となっています。名物としては、先述の金光酒造が手掛ける銘柄「賀茂金秀」や「桜吹雪」といった日本酒が全国的にも知られています。また、香木堂のかりんとうは広島土産としても人気があります。

黒瀬町は、柔道家の藤本哲子氏や、お笑いタレントの日村勇紀氏（バナナマン）といった著名人の出身地としても知られています。

このように黒瀬町は、豊かな自然環境、多様な産業、充実した生活・教育・文化施設、そして利便性の高い交通網が調和した、魅力ある地域です。

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