黒田綱之

黒田綱之の生涯と歴史的背景

黒田綱之（くろだ つなゆき）は、江戸時代前期における筑前国福岡藩の重要な人物であり、その背景にはさまざまな事件が織り込まれています。彼は、福岡藩の3代藩主・黒田光之の長男として生まれました。母は小笠原忠真の娘である宝光院で、幼名は万千代でしたが、後に初名として長良（ながよし）を名乗りました。

官位と成長

寛文9年（1669年）、綱之は元服し、従四位下・筑前守に叙任されました。この際、彼は4代将軍・徳川家綱から偏諱を受け、長良から綱之に改名しました。彼の出身と教育は高く評価されていたものの、彼の性格はあまり好意的に受け取られていませんでした。

廃嫡とその理由

しかし、綱之の人生は思わぬ方向へ進んでしまいます。延宝3年（1675年）、父である光之が福岡に帰国すると、突然江戸から呼び戻され、廃嫡の命令を受けることになります。彼は剃髪し得度させられ、蟄居を命じられました。この際に、弟の長寛（後の黒田綱政）が嫡子として選ばれました。

廃嫡に至る理由は、綱之の粗野で奔放な性格にありました。彼は酒宴を催すなどして家庭内での評判が悪化し、幕閣からも急速に評価を下げられてしまったのです。その廃嫡に際し、立花実山をはじめ多くの家臣が反対意見を表明しましたが、結果として綱之は寺に入ることとなり、約30年間を禅寺で過ごしました。

出家後の生活と死

宝永4年（1707年）には光之が死去し、彼の遺言により綱之の処分が解かれますが、綱之はその後も僧としての生活を続けました。彼は宝永5年（1708年）に54歳で生涯を終え、福岡市中央区の大涼山少林寺に眠っています。死後は福岡に恐れられる神として祀られ、幹亮権現として信仰の対象となりました。また、彼の業績を記した書『泰雲』が現存しています。

地名と影響

福岡市内の屋形原という地名は、綱之の居館があったことに由来しています。彼の霊牌は安永2年（1773年）に崇福寺に安置され、後に泰雲院四品前筑州刺史清岑道寧と諡されています。

第二黒田騒動

綱之の生涯における廃嫡や出家、弟の綱政の嫡子拝命といった事件は、黒田家の歴史において重要な転機をもたらしました。この一連の出来事は、綱之の祖父・黒田忠之の時代の騒動と似ていることから「第二黒田騒動」とも呼ばれています。光之が長男の綱之を廃嫡し、四男の綱政を嫡子としたものの、綱政もまた父の側近を排除するなどして権力を強化し、父子の対立を引き起こす結果となりました。

このように黒田綱之の人生は、江戸時代の福岡藩における権力の動きや家族の関係性を象徴するものであり、彼の存在はただの個人に留まらず、その後の歴史に影響を与えることとなるのです。

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