鼻削ぎ

鼻削ぎと鼻切りの歴史

鼻削ぎ（はなそぎ）及び鼻切り（はなきり）とは、人間の鼻を削ぎ取る行為を指し、その目的には主に二つの側面があります。ひとつは、犯罪に対する刑罰として行われるものであり、もうひとつは、戦争において討ち取った敵の証として実施されるものです。この行為は日本や中国の古代から中世にかけて存在し、一部の文化圏においては命ぜられたままで行われてきました。

刑罰としての鼻削ぎ

中国における歴史

古代の中国では劓（鼻削ぎ）が五刑と呼ばれる主要な刑罰の一つに数えられていました。秦の始皇帝の時代には、鼻を削ぐことが一般的になり、これが特に厳しいとされる社会が存在したといいます。彼の時代には、鼻のある人間よりも、ない人間の方が珍しい町があったとも言われています。これに対して、漢の時代になってからは、宮刑を除き、肉刑は多くが廃止されていきますが、一部の周辺国家では今でもこの風習が続いていました。特に唐の時代や後のモンゴル族の支配下で、鼻削ぎや耳切りが用いられ、重罪にはこれらの肉刑が科されていました。

日本における懲罰の実施

一方、日本においては、鼻削ぎの刑が平安時代頃から普及し始めました。特に、窃盗や賭博の常習犯に対して行われることが多く、平安時代後期に成立した歴史物語『大鏡』には、鼻を削ぎ落とすことが脅しとして使われた例が記録されています。これによって、身体の一部分を失うことが自身を非人とするという考えが広まっていったようです。

他にも、鎌倉時代の訴状には、地頭によって「耳を切り、鼻を削ぎ」と脅された百姓の訴えが残されており、また、戦国時代には、戦功の証明として敵の鼻を切り取る慣例がありました。

戦功の証明としての鼻削ぎ

戦においては、討ち取った敵の口から鼻を切り取ることが、功績を示す手段として用いられました。この行為は平安時代から行われており、特に武士社会では重視されていました。戦功を示すために持ち帰る鼻は官へ提出され、戦後には首実検によってその正当性が確認されることが一般的でした。

具体的な記録として、歴史文献『信長公記』には、武士が敵の鼻を持ち帰ったことが記されています。豊臣秀吉の時代でも、この行為は行われ、敵の耳や鼻を切って戦功を示すことがありました。特に、文禄の役においては、大規模にこの行為が行われ、非戦闘員も含めて多くの耳や鼻が切り取られました。

現代の視点から

現代においては、鼻削ぎや鼻切りはその残酷さから非人道的とされ、国際的な人権規約にも反する行為とみなされています。日本以外の地域でも、特定の文化や法律に基づいて一時的に行われたことがあり、これに対する批判も高まっています。特に、アフガニスタンではTaliban政権下において、逃げた妻への罰として鼻削ぎが行われた事例が報道され、女性の人権問題として注目されました。

また、アメリカのネイティブアメリカンの文化においても、姦通に対する報復行為として鼻を切り落とす風習がありました。このように、鼻削ぎは古代から行われてきた特異な刑罰の一つであり、今なお多くの議論を呼び起こしています。

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