龍泉寺 (名古屋市守山区)

龍泉寺（りゅうせんじ）

龍泉寺は、愛知県名古屋市守山区竜泉寺にある天台宗の寺院で、山号を松洞山、院号を大行院と称します。地元では「竜泉寺」とも表記され、古くから信仰を集めてきました。この寺は、名古屋城を鎮護する尾張四観音の一つであり、尾張三十三観音霊場の第二十五番札所としても知られています。本尊は馬頭観音で、多くの参拝者が訪れます。

歴史

龍泉寺の創建には、いくつかの伝説が語り継がれています。

「沙石集」には、龍王が一夜にして寺を建立したという説があり、また、馬頭観音が出現したとされる池の跡も残ると伝えられています。また、宝暦5年（1755年）に記された「龍泉寺記」によると、延暦年間に伝教大師最澄が熱田神宮に参籠した際、龍神のお告げを受け、多々羅池畔で経文を唱えたところ、池から龍が昇天し、同時に馬頭観音が出現したため、これを本尊として祀ったのが始まりとされています。この伝説は、龍泉寺の創建に神秘的な色彩を加えています。

一方、弘法大師空海も熱田神宮に参籠した際に、熱田の八剣のうち三剣をこの龍泉寺に埋納したという伝承も残っており、これによって龍泉寺は熱田の奥の院ともみなされてきました。これらの伝承は、龍泉寺が古代から霊験あらたかな場所として認識されていたことを示唆しています。

龍泉寺は、庄内川を望む高台に位置し、周囲を崖や湿地に囲まれた要害の地でした。そのため、古くから戦の際には軍事的な拠点として利用されることが多く、濃尾平野を一望できるその立地から、陣が置かれることもありました。弘治2年（1556年）には織田信行が城を築いたとも言われています。また、永禄3年（1560年）の桶狭間の戦い前には、織田信長が清須城北東方面の防衛線を構築するために、一隊を龍泉寺に派遣しています。

天正12年（1584年）の小牧・長久手の戦いでは、羽柴秀吉が徳川家康を討つためにこの地に陣を張りました。この際、秀吉が退却する際に放火したため、建物が焼失してしまいました。この出来事は、「一夜堀」の伝説として語り継がれています。その後、慶長3年（1598年）に近隣の寺院、密蔵院の僧侶秀純によって再興されました。しかし、明治39年（1906年）2月には再び放火に遭い、多宝塔、仁王門、鐘楼を除く全ての建物が焼失してしまいました。この火災の跡から、慶長大判切2枚、慶長小判98枚が入った小判容器が発掘され、この資金を元に本堂が再建されたというエピソードがあります。

多宝塔は、明治28年（1895年）に建造されたもので、現在もその美しい姿を見ることができます。

龍泉寺城

龍泉寺は、歴史の中で何度か軍事施設として利用されたことから、「龍泉寺城」と呼ばれることもあります。現在も境内の周囲の一部には空堀状の跡が残り、往時の面影を偲ぶことができます。また、境内裏側の日本庭園の横には三層の模擬天守が建てられており、これは重要文化財の木造地蔵菩薩像や円空仏などを収蔵する宝物館を兼ねています。宝物館は毎週日曜日に開館しています。

文化財

龍泉寺には、歴史的に貴重な文化財が数多く残されています。

重要文化財

仁王門：慶長12年（1607年）に建立された入母屋造杮葺きの楼門。歴史を感じさせる堂々とした佇まいです。
木造地蔵菩薩立像：宝物館に収蔵されている、精巧な作りの木造の地蔵菩薩像。

その他文化財

円空作馬頭観音立像：円空が制作したとされる高さ114cmの馬頭観音像。
円空作千体仏：円空が制作したとされる千体仏。

年中行事

龍泉寺では、年間を通して様々な行事が執り行われています。

修正会（12月31日～1月6日）：新年を迎えるための法要。
開宗記念法要（1月26日）：龍泉寺の開基を記念する法要。
節分会・星供（2月3日）：節分の日に行われる厄除けの行事。
彼岸会（春分の日及び秋分の日の前後7日間）：先祖供養のための法要。
灌仏会（4月8日）：お釈迦様の誕生を祝う行事。
盂蘭盆会（7月13日～17日）：先祖の霊を供養する行事。
盆施餓鬼会（8月17日）：無縁仏を供養する行事。

所在地と交通アクセス

所在地：愛知県名古屋市守山区竜泉寺1丁目902番地
交通アクセス：
名古屋ガイドウェイバス志段味線（ゆとりーとライン）：「竜泉寺口」または「竜泉寺」停留所下車、徒歩約3分。
自動車：名古屋第二環状自動車道（名二環）の小幡インターチェンジ、または松河戸インターチェンジより北東へ約5分。

周辺情報

龍泉寺の周辺には、以下の施設や名所があります。

庄内川：龍泉寺の近くを流れる一級河川。
竜泉寺の湯：日帰り温泉施設。
愛知県道15号名古屋多治見線（通称：竜泉寺街道）：龍泉寺を通る主要道路。
小幡緑地：広大な緑地公園。
吉根城跡：かつてこの地にあった城の跡。

参考文献

『尾張名所図会』第四巻 龍泉寺、1844年

外部リンク

龍泉寺（公式サイト）
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