龍門寺 (岐阜県七宗町)

龍門寺の歴史と文化

古刹の歴史

龍門寺は、岐阜県加茂郡七宗町に位置する臨済宗妙心寺派の寺院で、神渕山という山号を持っています。この寺院は、岐阜県内の臨済宗寺院の中でも特に古く、その歴史は鎌倉時代にまで遡ります。創建は延慶元年（1308年）とされ、初代美濃国守護大名の土岐頼貞が、元から来日した僧の一山一寧を招いて、岐阜市長良福光に創建したと伝えられています。長良には現在も「龍門寺」という地名が残っています。創建時の山号は福光山でした。

事実上の開山は、一山一寧の法孫である太清宗渭とされ、開基は土岐頼貞の長男である土岐頼直とされています。龍湫周澤が記した『随得集』には、太清宗渭が初め兜率寺に住み、後に龍門寺に移ったことが記されています。その後、兜率寺と龍門寺を合わせて禅院を開創し、兜率寺から弥勒菩薩を迎えて、寺号を龍門寺としたと伝えられています。龍門寺の寺伝によると、後宇多法皇から「福光殿」の額を賜ったとされています。

山号の変遷と寺格

空谷明應の語録『佛日常光國師語録』には、「一山國師濃州福光山龍門寺開山」とあり、『扶桑五山記』には、「神淵山龍門禅寺開山一山國師在神淵郷或日福光山」と記されています。これらの記録から、龍門寺は当初福光山という山号であったことがわかります。延文元年（1356年）には、五山・十刹に次ぐ諸山に列せられ、至徳3年（1386年）には東西800m、南北800mの広大な敷地に伽藍が構築されました。しかし、その後戦乱によって焼失し、明徳年間(1390年～1394年）の間に現在地に移されたと考えられています。この時に山号を神淵山に改めたとされています。

宗派の変遷と寺領の変遷

15世紀中ごろ、龍門寺は臨済宗五山派の京都相国寺の塔頭である雲頂院の末寺でした。応仁の乱の際、妙心寺派に帰依していた守護代の斎藤妙椿によって、五山派であった龍門寺は神淵郷を押領されました。長享元年(1487年)頃、龍門寺の本寺である相国寺の雲頂院が室町幕府に訴え、斎藤妙純から龍門寺領の神淵郷を返還する旨の回答を得ましたが、実行されませんでした。その後、再度安堵の奉書が下付され、寺領は返還されたものの、五山派の外護者であった土岐氏がいなくなったことで、龍門寺の基盤は揺らぎました。永正7年(1510年)に雪心宗安が龍門寺の公帖を受けたのを最後に、五山関係の史料から姿を消し、この後に妙心寺派に転派したものと考えられています。

近世以降の龍門寺

天文8年（1539年）に再び兵火で焼失し、衰退しましたが、天文24年（1555年）に清泰寺の大圭紹琢によって再興され、同寺の末寺となりました。承応2年（1653年）には、妙心寺の直末となりました。総門は寛文12年（1672年）に創建されましたが、昭和34年（1959年）の伊勢湾台風で倒壊しました。しかし、彫刻されていた龍は無事であったため、復元され、門に掲げられています。

龍にまつわる伝説

龍門寺には、龍に関する伝説が残っています。ある日、みすぼらしい男が寺に現れ、襖の龍の絵を毎日見ていました。ある夕方、雷雨の中、男が鑿で材木を彫り始め、数日後、まるで生きているかのような龍の彫刻が完成しました。男は姿を消し、その龍を総門に掲げたと言われています。その後、夜になると龍が抜け出して暴れるという噂が広まり、鉄砲で撃たれた穴があると言われています。龍門寺では、村人と共に読経をして龍の供養をしたと伝えられています。

境内の様子

境内には、文政8年(1825年)に犬山藩御用石工の県半右衛門正房によって造られた地蔵菩薩像があります。現在の本堂は天保元年(1830年)に建立されたものです。創建以来、3回の火災に見舞われており、内陣は平成18年（2006年）に再建されています。境内には龍の池や龍の井戸など龍にまつわるものや、神渕稲荷大明神の社もあります。また、境内には甚五郎桜という古木があり、春には「甚五郎桜まつり」として多くの花見客で賑わっています。

文化財

龍門寺には、多くの文化財が所蔵されています。絹本著色釈迦十六善神図、絹本著色涅槃図、彩箋墨書妙法蓮華経寿量品第十六が岐阜県の重要文化財に指定されています。また、土岐頼貞木像、一山一寧国師画像、開山国師墨書真筆が七宗町の重要文化財に指定されています。

参考資料

- 『七宗町史通史編』II 歴史第三編中世第二章龍門寺と土岐氏
- 『七宗町史通史編』III 宗教・民俗第一編宗教第二章寺院神渕山龍門寺
- 『岐阜県百寺』龍門寺

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