1-Wire

1-Wire：シンプルで汎用性の高い低速バス規格

1-Wireは、マキシム・インテグレーテッド(旧ダラス・セミコンダクタ)が開発した、1本の信号線と接地線のみで通信を行う低速バス規格です。I²Cと似た仕組みですが、データ転送速度は低く、より長距離の通信が可能です。そのシンプルさと低コストから、デジタル温度計などの小型センサデバイスとの接続に広く利用されています。

1-Wireの利点：シンプルさと小型化

1-Wireの最大の特徴は、わずか2本の線でデバイスを接続できる点にあります。デバイスは、バスラインから電力供給を受けるため、電源を内蔵する必要がなく、非常に小型化できます。特にiButtonと呼ばれる、ボタン電池のような形状のデバイスは、その小型さを象徴しています。

この小型化のメリットは、様々な用途に活かされています。プリント基板への実装はもちろんのこと、ノートパソコンや携帯電話のバッテリーパックなど、さまざまな機器に組み込まれています。また、実験機器やデータ収集システムなどでも、その簡便性から採用されています。この場合、電話用のモジュラーコネクタやカテゴリー5ケーブルなどを用いて接続されることが多く、1-Wireデバイスが直接ソケットに内蔵されていることもあります。

MicroLan：1-Wireセンサネットワーク

複数の1-Wireデバイスを接続したネットワークをMicroLanと呼びます。温度センサ、タイマ、電圧・電流センサ、バッテリーモニタ、メモリなど、様々なセンサやデバイスを接続でき、USB、シリアルポート、パラレルポートなどを介してPCと接続することが可能です。接続には、PC側のインタフェースから1-Wireに変換するマスターチップが必要です。

MicroLanは、マイクロコントローラとの接続も容易です。汎用マイクロコントローラのオープンドレインI/Oポートからプルアップすることで、簡単に接続できます。Parallax BASIC StampやMicrochip PICファミリーなど、多くのマイクロコントローラに対応しています。

iButton：ボタン電池型1-Wireデバイス

iButtonは、1-Wireデバイスをボタン電池状のステンレスパッケージに収めたものです。ソケットにタッチするだけで簡単に1-Wireバスに接続でき、クレジットカードリーダーのような感覚で使用できます。長時間の接続には、はめ込むタイプのソケットが使用されます。

JavaOne 1998では、iButtonをリング状にマウントしたJavaRingが発表されました。これはJava仮想マシン（Javaカード2.0互換）を内蔵しており、セキュリティトークンとしての利用などが期待されました。

1-Wireデバイスのユニークな識別

各1-Wireチップには64ビットのユニークなシリアル番号が割り当てられています。このシリアル番号を利用することで、iButtonを鍵として使用したり、警報装置の設定/解除などに利用できます。

1-Wire通信プロトコル

MicroLanでは、PCやマイクロコントローラがマスターデバイスとしてネットワーク全体を制御します。マスターは一度に1つのスレーブデバイスとしか通信しません。通信は、マスターデバイス上のソフトウェアで制御されます。マスターは、プルアップ抵抗を通じてバスに電力を供給します。

通信は、まずマスターがリセットパルスを送信することで開始されます。その後、スレーブデバイスは存在を知らせるパルスを送信します。データの送受信は、短いパルス（"1"）と長いパルス（"0"）で表現されます。パルスの長さは、スレーブデバイス内の単安定マルチバイブレータの動作時間に基づいています。

データ受信時は、マスターは各ビット受信前に短いパルスを送信します。スレーブが"0"を送信する場合は、データ線を一定時間ローレベルに保ちます。"1"の場合は何もしません。

基本的なシーケンスは、リセットパルス、8ビットコマンド、データの送受信、そして8ビットCRCによるエラーチェックです。16ビットCRCも対応しています。

多数のデバイスを接続する場合でも、各デバイスのユニークなシリアル番号によって個別にアクセスできます。シリアル番号の上位バイトはデバイスの種類、下位バイトはCRCです。マスターは、選択コマンドとシリアル番号を送信することで、特定のデバイスのみを選択的に制御できます。

バス上のデバイスを検出するには、enumerationコマンドを使用します。マスターは、デバイスのシリアル番号を1ビットずつ送信し、各ビットに対してスレーブから応答を受け取ります。応答がない場合は、そのビット以降の探索を打ち切ることができるため、効率的なデバイス探索が可能です。

バス上のデバイスの位置が重要な場合、パススルーや切断を行う特殊デバイスも存在します。

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