1873年恐慌

1873年恐慌とその影響

1873年恐慌（Panic of 1873）は、1873年から1879年にかけて、ヨーロッパと北アメリカで発生した深刻な金融危機を指します。この経済的混乱は、それまで世界経済を先導していたイギリスに特に大きな打撃を与え、長期にわたる経済停滞を引き起こしました。結果として、この出来事は「大不況」と呼ばれ、1930年代の世界恐慌が起こるまで、経済学者たちはこの状況をさまざまな観点から分析しました。

不況の要因

この恐慌の背後には、いくつかの重要な要因が存在しました。普仏戦争の影響で、ヨーロッパは戦後にインフレーションが進行しました。また、鉄道への投機的投資の増加や、巨額の貿易赤字も経済システムに歪みを生じさせました。特に1871年のシカゴ大火と1872年のボストン大火などにより、多大な資産の損失が生じ、銀行の資本準備高に深刻な歪みをもたらしました。1883年9月から10月にかけて、ニューヨーク市の準備高は驚くべき速さで急減しました。

アメリカ合衆国の状況

南北戦争後のアメリカでは、鉄道の建設が経済に大きな活気をもたらしました。しかし、1868年から1873年の間に新たな鉄道が33,000マイル敷設された反面、この過剰投資は多くの投機家を巻き込むことになりました。この期間、鉄道産業は最も多くの雇用を生むセクターとなりましたが、同時に大量の現金を必要としたため、経済の安定性を損なう要因ともなりました。

1873年には、アメリカ合衆国で法定価格での銀の交換が停止される「1873年貨幣鋳造法」が施行されました。この変更は西部の鉱業に深刻な影響を与え、農業にも悪影響をもたらしました。これに対する抗議が高まり、投資家たちは長期の債券を避けるようになりました。

ジェイ・クック&カンパニーの破綻

1873年9月、ジェイ・クック&カンパニーがノーザン・パシフィック鉄道の債券を売却できなくなり、破綻を宣言しました。この事態は直ちに他の金融機関にも波及し、ニューヨーク証券取引所は10日間閉鎖されました。この急激な事態の変化は、急速な失業や企業倒産を引き起こしました。

ヨーロッパにおける影響

恐慌は、アメリカにとどまらず、ヨーロッパの工業国にも大きな影響を与えました。特にドイツとオーストリアでは、1870年から1871年のドイツ統一を背景に急速に拡大した経済が、恐慌により逆流することになりました。オーストリアのウィーンでは証券取引所が崩壊し、多くの銀行が破綻しました。ドイツも同様に、金融危機によって経済的影響を受けました。

経済回復への道

恐慌は1879年春に緩和されましたが、労働者と雇用主の間の緊張関係は続きました。その後、アメリカ合衆国への移民の流入が続き、経済が再び活気を取り戻すきっかけとなりました。職場環境や経済政策の見直しがこの復興に寄与し、長期にわたる不況からの脱却へとつながりました。一般的に、この恐慌は経済構造や社会情勢に深い影響を与え、以降の社会改革につながる重要な出来事となりました。

このように、1873年恐慌は単なる経済的混乱だけではなく、地域や国を超えた社会的、政治的変革の引き金ともなったのです。

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