1894年のメジャーリーグベースボール

1894年のメジャーリーグベースボール：オリオールズ黄金時代の幕開けと記録ラッシュ

1894年、メジャーリーグベースボール（MLB）は、ボルチモア・オリオールズの躍進、前代未聞の打撃記録、そして規則の変更など、様々な出来事が重なった特筆すべき年となりました。

オリオールズ黄金時代の到来

アメリカン・アソシエーション解散後、ナショナルリーグに加入したボルチモア・オリオールズは、1892年に最下位に沈みましたが、ネッド・ハンロン監督の就任を機にチームは大きく変貌を遂げます。ジョー・ケリー、ヒューイー・ジェニングス、ダン・ブローザース、ウィリー・キーラーといった名選手を獲得し、ハンロン監督とジョン・マグローは、内野手のカットオフプレー、ヒットエンドラン、ボルチモア・チョップなど、革新的な戦術を次々と開発しました。

特に「ボルチモア・チョップ」は、キーラーが得意とした打法で、意図的にグラウンドに叩きつけて高くバウンドさせ、内野安打を狙うというものでした。この戦術を成功させるため、一塁側のグラウンドを固くするという工夫も凝らされました。オリオールズは、これらの新戦術と選手の才能が開花し、1894年に見事ナショナルリーグ優勝を果たし、その後1896年まで3連覇を達成する黄金時代を築きました。

この時代のオリオールズからは、後に監督として成功する人物が多数輩出されました。ジョン・マグローはニューヨーク・ジャイアンツ、ウィルバート・ロビンソンはブルックリン・ロビンス、ヒューイー・ジェニングスはデトロイト・タイガースの監督として、それぞれチームをリーグ優勝に導いています。また、ジョー・ケリーもシンシナティ・レッズの選手兼監督を務めました。

記録ラッシュの年

1894年は、打撃面で数々の記録が生まれた年でもありました。ボストン・ビーンイータースのヒュー・ダフィーは、打率.440という驚異的な数字を記録し、これは現在も破られていないMLBシーズン歴代最高打率です。また、フィラデルフィア・フィリーズは、チーム打率.3497を記録し、4割打者を4人擁するという、空前絶後の記録を打ち立てました。

ヒュー・ダフィー: 打率.440
タック・ターナー: 打率.418（スイッチヒッターとして唯一の4割打者）
サム・トンプソン: 打率.407
エド・デラハンティ: 打率.404
* ビリー・ハミルトン: 打率.403

ただし、この年はナショナルリーグ全体の打率が.309と、極端な打高投低の年であったことも考慮する必要があります。

テンプルカップの創設

オリオールズの革新的な戦術を「邪道」とみなすニューヨーク・ジャイアンツのファンと、オリオールズのファンとの間で論争が起こりました。そこで、ピッツバーグ・パイレーツの元会長であったウィリアム・C・テンプルが、両チームにポストシーズンゲームを行うことを提案し、優勝カップを寄贈しました。これがテンプルカップの始まりです。

1894年のテンプルカップでは、ニューヨーク・ジャイアンツがボルチモア・オリオールズに4連勝し、優勝カップを獲得しました。しかし、ペナントレースの意義が薄れるという批判が高まり、1897年限りでテンプルカップは廃止されました。

規則の改訂

1894年には、野球規則にもいくつかの変更がありました。バント失敗がストライクとして数えられるようになったのもこの年からです。ただし、2ストライク後のスリーバント失敗は、1902年まではファウルとみなされていました。また、投手ボックスが投手板に変更されたのもこの年です。

1894年は、ボルチモア・オリオールズの黄金時代の幕開け、記録ラッシュ、テンプルカップの創設、規則の改訂など、MLBの歴史において重要な転換期となった年と言えるでしょう。

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