1930年代の建築

1930年代の建築

1930年代は、世界的に建築様式が大きく変化した時代であり、特に日本では、モダニズム建築が台頭し、都市景観に大きな影響を与えました。この時期には、数多くの建築コンペが開催され、才能ある建築家たちがその腕を競い合いました。本稿では、1930年代に注目された主要な建築プロジェクトを、日本と海外に分けて詳細に解説します。

日本の主要作品

コンペ・受賞作品

日本生命館（日本橋高島屋）（1930年）：高橋貞太郎がコンペで1等当選し、実施設計まで担当しました。この建物は、当時のモダニズム建築を代表する作品の一つです。
大礼記念京都美術館（京都市美術館）（1930年）：前田健二郎の設計案がコンペで1等に選ばれ、1933年に竣工しました。この美術館は、伝統的な様式とモダニズムが融合した美しい建築として知られています。
軍人会館（九段会館）（1930年）：小野武雄の設計案がコンペで1等を受賞しました。その後、川元良一が小野の案を基に実施設計を進めました。この建物は、戦前の軍事関連施設の中でも重要な存在でした。
東京国立博物館（1931年）：渡辺仁の設計案がコンペで選ばれました。この博物館は、日本の歴史と文化を象徴する重要な施設であり、その壮大な建築は多くの人々を魅了しています。
大阪放送会館（1932年）：渡辺仁の案がコンペで最優秀案に選定されました。この会館は、当時の放送技術の進歩を象徴する建物でした。
NHK東京放送会館（1933年）：山下寿郎建築事務所の案が指名設計競技で選ばれました。この会館は、日本の放送史において重要な役割を果たしました。

その他の注目作品

明治製菓本郷売店（1930年）
朝鮮貯蓄銀行本店（1932年）
明治製菓売店（1934年）：実施されなかった可能性が高い
愛育研究所（1936年）

幻の計画

1930年代には、数多くの建築計画がコンペで選ばれたものの、様々な理由で実現しませんでした。これらの「幻の建築」も、当時の建築界の動向を知る上で重要な資料です。

東京市庁舎（1934年）
神戸市公会堂（1935年）
ひのもと会館（1935-1936年）
朝鮮25周年美術館（1935年）
昭和鉄鋼会社鞍山製鉄所（1937年）
日本万国博覧会建国記念館（1937年）
大連公会堂（1938年）

日本国外の主要作品

ソビエト連邦

1930年代のソビエト連邦では、社会主義リアリズムの影響を受けた大規模な建築プロジェクトが数多く進行しました。

スヴェルトロフクク・ウラル工業省プロジェクト（1930-1931年）
前政治犯協会会館（1930年）
スターリングラード住居コンビナート（1930年）
ロストフ・アン・ドン・ソビエト庁舎（1930年）
イヴァノヴォ・ヴォツネセンクス大劇場（1930年）
スヴェルドロフスク大劇場（1932年）
モスクワ赤の広場のナルコムチアジプロムNarkomtiazhpromビル（1934年）
ソビエト宮殿（1931年-1933年）：ボリス・イオファンが当選しましたが、実現しませんでした。
重工業省モスクワ庁舎（1934年）
クラースヌィエ・ヴォロータ駅（クラスナヤ・ヴァローダ）地下鉄駅（1935年）

その他の地域

ベルリン国立銀行オープンコンペティション（1933年）
ジェルジンスカヤ地下鉄駅コンペティション
レニングラード学生コミューンコンペティションプロジェクト
アレクサンダー広場改良オープンコンペティション
ソビエト・ウクライナ大衆劇場（ウクライナ・ハリコフ劇場, 1931年）：川喜田煉七郎が4位に入選
EUR会議場設計競技（1938年）：アダルベルト・リベラが当選
パラッツォ・リットリオ設計競技（1937年）
パレ・ド・トーキョー（1930年代）：Jean-Claude Dondel、 André Aubert、 Paul Viard、 Marcel Dastugueらのグループが当選

関連項目

日本近代建築史
モダニズム建築
逓信建築
* 歴史主義建築

まとめ

1930年代は、建築の世界において革新的な変化が見られた時代でした。数々のコンペを通じて、多くの建築家が才能を発揮し、今日まで残る名建築が生まれました。また、実現には至らなかったものの、当時の建築界の動向を知る上で重要な意味を持つ計画も多く存在します。これらの作品を通して、1930年代の建築界のダイナミズムを感じることができるでしょう。

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