1938年の日本公開映画

1938年（昭和13年）の日本公開映画

1938年（昭和13年）の1月1日から12月31日までの期間に、日本の劇場で商業公開された映画作品について記述します。

この年には、日本国内で製作された作品に加え、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、中国など、世界各国から様々なジャンルの映画が紹介されました。各作品名の隣には、その映画がどこの国で製作されたものかが示されています。

多様な公開作品

1938年には年間を通じて数多くの作品が公開されました。例えば、年の初めにはフランス製作の「赤ちゃん」やアメリカの「踊る不夜城」、イギリスの「鎧なき騎士」などが公開され、早くもバラエティ豊かなラインナップが揃いました。2月にはアメリカの喜劇王チャールズ・チャップリン監督・主演の「モダン・タイムス」が登場し、大きな話題を呼びました。

春から夏にかけても、各国の注目作が続々と封切られました。3月にはドイツの「愛国の騎士」、フランスの「或る映画監督の一生」、アメリカの「戦友」などが公開され、戦争や社会派ドラマ、コメディなど多岐にわたるジャンルの作品が観客を魅了しました。5月にはフランスの「ジェニイの家」が公開され、静かな感動を呼びました。6月にはフランスの「舞踏会の手帖」が公開され、特に高い評価を受けました。

日本映画も活発に製作・公開されました。1月には、日本の戦中・戦後の映画史において重要な位置を占める「五人の斥候兵」が公開されました。その他、「静御前」「花束の夢」「新家庭暦」「上海」「風の女王」「阿部一族」「泣虫小僧」「忠臣蔵」「出発」「母の魂」「藤十郎の恋」「男の魂」「太陽の子」「愛より愛へ」「田園交響楽」「人妻真珠」「花ちりぬ」「エノケンの法界坊」「人生劇場 残侠篇」「母と子」「按摩と女」「金毘羅代参 森の石松」など、時代劇から現代劇、社会派作品まで様々なテーマの作品が登場しました。

キネマ旬報ベストテンに見る評価

その年に公開された映画の中で特に評価が高かった作品は、当時の映画専門誌『キネマ旬報』が選出したベストテンに名を連ねています。1938年のベストテンには、日本映画、外国映画それぞれから優れた作品が選ばれています。

日本映画ベストテン

1. 五人の斥候兵
2. 路傍の石
3. 母と子
4. 上海
5. 綴方教室
6. 鶯
7. 阿部一族 / 泣虫小僧（同率7位）
9. ああ故郷
10. 太陽の子

このランキングからは、「五人の斥候兵」のような戦争と人間を描いた作品や、「路傍の石」「母と子」「綴方教室」といった庶民の生活や家族、教育をテーマにした作品が当時の観客や批評家から高く評価されていたことが分かります。

外国映画ベストテン

1. 舞踏会の手帖（フランス）
2. （該当なし）
3. ジェニイの家（フランス）
4. モダン・タイムス（アメリカ）
5. スタア誕生（アメリカ）
6. 赤ちゃん（フランス）
7. 鎧なき騎士（イギリス）
8. 新婚道中記（アメリカ）
9. 新天地（アメリカ）
10. レ・ミゼラブル（ジャン・バルジャン）（フランス）

外国映画では、フランス映画が上位を占め、「舞踏会の手帖」が1位に輝きました。アメリカ映画からはチャップリンの「モダン・タイムス」や名作「スタア誕生」などがランクインしています。文豪ヴィクトル・ユーゴー原作の「レ・ミゼラブル」は、シリーズ作品として公開されたうちの「ジャン・バルジャン」編がベストテン入りしました。

このように1938年は、日本の戦前期における映画文化が成熟し、国内作品の多様化と品質向上が進むとともに、世界各国の優れた作品が積極的に紹介され、日本の観客が国際的な映画に触れる機会も豊かだった年と言えるでしょう。数多くの作品が公開され、それぞれの時代背景や国民性を映し出しながら、当時の人々に娯楽や感動を提供しました。

※記載されている作品は、1938年に日本で商業公開された映画の一部です。全てを網羅しているわけではありません。

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