1946年の航空

第二次世界大戦終結後、1946年は世界の航空分野にとって、復興と新たな発展が同時に進行した極めて重要な年でした。戦時中に培われた技術は平和利用へと転換され、民間航空が本格的に動き出す一方で、ジェット機の開発競争や飛行記録への挑戦も活発に行われました。

この年の重要な出来事として、ロンドン・ヒースロー空港の開港が挙げられます。まだ正式な開港前である1月1日には、既にブルティッシュ・サウス・アメリカン・エアウェーズのアブロ ランカストリアンが初の商業飛行として飛び立ち、5月31日に空港は正式にその扉を開きました。大西洋を跨ぐ民間航空も再開・拡大し、2月6日にはTWA航空がニューヨークとパリを結ぶ国際線を運航開始しました。また、戦後の航空需要を見越して新たな航空会社が相次いで設立されました。8月1日にはイギリスの国営航空会社である英国欧州航空が、9月16日にはイタリアのアリタリア航空、9月19日にはポルトガルのTAPが誕生しています。太平洋地域でも、7月26日にトランス・パシフィック航空（後のアロハ航空）が運航を開始しました。回転翼機の分野では、3月8日にベル 47ヘリコプターが商業用途での最初の型式認定を取得し、ヘリコプターの民間利用への道が開かれました。

ジェット機の開発は戦後も各国で続けられました。ソ連では4月24日に初のジェット実用機となるMiG-9が初飛行に成功しました。アメリカ海軍では、7月21日にマクドナルド XFD-1が空母フランクリン D ルーズベルトへの着艦を成功させ、これは空母に着艦した初の純粋なジェット機という歴史的な出来事となりました。速度記録への挑戦も盛んに行われ、9月7日にはイギリス空軍のグロスター ミーティアがE.M. ドナルドソン少佐の操縦により、当時の世界速度記録となる990.79 km/hを樹立しました。また、長距離飛行能力も追求され、9月29日にはアメリカ海軍のロッキード P2Vが18,082 kmという長距離飛行記録を達成しています。しかし、技術の限界への挑戦は悲劇も招きました。イギリスで音速突破を目指していたデ・ハビランド DH.108は、9月27日に試験飛行中に空中分解し、操縦していたジェフリー・デハビランド氏が命を落としました。ジェットエンジンを民間輸送に活用する試みも行われ、11月23日にはロールス・ロイス ニーンエンジンを搭載したアブロ ランカストリアン改造機が、ロンドン・パリ間を41分で結ぶ飛行に成功し、これが初のジェット機による国際旅客飛行とされています。軍事的な出来事としては、7月1日にビキニ環礁で実施された原子爆弾投下実験（クロスロード作戦）において、B-29爆撃機が重要な役割を果たしました。また、航空産業の再編もあり、4月5日にはアメリカの航空機メーカー、ブルースター・エアロノーティカルが倒産しました。

純粋な飛行性能の記録も更新されました。1月10日には、アメリカのシコルスキー R5ヘリコプターがコネチカット州上空で非公式ながらも6,400 mのヘリコプター高度記録を樹立しました。固定翼機では、1月26日にウィリアム・カウンシル氏がロッキード P-80シューティングスターに搭乗し、アメリカ大陸を4時間13分で横断する飛行記録を達成しました。また、航空ショーの世界では、6月15日にアメリカ海軍のアクロバット飛行チーム「ブルーエンジェルス」がフロリダ州のジャクソンビル・クレイグ基地で初の公開演技を行い、その歴史の第一歩を記しました。この年の航空分野で功績を称えられた人々もおり、ナショナル・トロフィーはジュアン・トリップ氏に、FAIゴールド・エア・メダルはヘリコプター開発の父とも呼ばれるイーゴリ・シコールスキイ氏に授与されました。（ハーモン・トロフィーについては情報がありませんでした）

1946年は、第二次世界大戦後の新しい時代において、民間航空が立ち上がり、ジェット技術が急速に進化し、飛行性能の限界に挑む記録飛行が相次いだ、航空史における節目とも言える一年でした。これらの出来事は、その後の航空宇宙開発の方向性を決定づける上で重要な意味を持っています。

もう一度検索