1949年の日本競馬

1949年（昭和24年）は、戦後の混乱から立ち直りつつあった日本の競馬界にとって、体制の確立と発展に向けた重要な一年となりました。この時期、国営競馬は暫定的な性格から脱却し、より恒久的な制度としての基盤を固めていきます。また、全国各地で新しい競馬場が誕生する一方で、役割を終えた競馬場が姿を消すなど、施設の面でも大きな変化が見られました。さらに、主要競走では多くのドラマが生まれ、新たな競走も創設されました。

体制の整備と法改正

この年、日本の競馬を巡る制度面でいくつかの significant な動きがありました。まず、2月2日には各競馬事務所に国営競馬協議会が設置され、運営体制の強化が図られました。4月1日には関東地方競馬組合が設立され、地方競馬の組織化も進められています。5月31日に公布された農林省設置法では、それまで暫定的とされていた国営競馬を当面の間維持する方針が決定され、競馬部は正式に農林省の一部門として組み込まれました。これにより、国営競馬はより安定した運営基盤を得ることになります。6月には競馬部に裁定課が新設され、競走の公正を保つための機能が強化されました。

地方競馬との関係性においても変化がありました。9月24日には国営競馬実施規則が改正され、中央と地方の競馬場間で一部の出走馬の交流が可能となりました。これは、後の日本競馬における人馬の流動性を高める上で重要な一歩でした。また、12月17日には地方競馬に関する法改正が行われ、横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市の4市が都道府県と同様に、年間最大で4回6日、合計24日間の競馬開催権を得ることになりました。これにより、大都市における地方競馬の開催機会が拡大しました。

競馬場の開設と変遷

この一年は、全国各地で競馬場の開設が相次いだ年でもあります。6月5日には愛知県に名古屋競馬場が開設。9月18日には広島県の福山競馬場、9月28日には兵庫県の姫路競馬場がそれぞれ新たな施設として誕生しました。また、熊本県でも山鹿競馬場が開設されています。一方で、戦時中や終戦直後の状況下で設置された一部の競馬場はこの年に廃止されています。具体的には、茨城県の取手競馬場、東京都の八王子競馬場、兵庫県の淡路競馬場、広島県の五日市競馬場、山口県の柳井競馬場がその役割を終えました。

既存の施設にも動きがありました。福島競馬場は戦災からの復興が進み、9月6日に開催が再開されました。再開初日の開場式を経て、17日から25日まで競馬が開催され、初日から多くのファンを集めました。また、新たな阪神競馬場（現在の阪神競馬場とは異なる場所）の建設も進められ、11月15日に竣工。12月3日に開場式が行われました。

注目すべき競走と出来事

この年の競馬開催の中で、特に人々の記憶に残った出来事として、6月5日に行われた第16回東京優駿（日本ダービー）が挙げられます。この競走でタチカゼが優勝し、単勝馬券に55,430円という当時のダービー史上最高となる高額配当をもたらしました。この結果は、当時の人気歌手ディアナ・ダービンにちなんで「ダイ穴ダービー」と呼ばれるほどの衝撃を与え、競馬ファンを大いに驚かせました。また、この年の秋には、決勝写真判定用のフォトチャートカメラの開発が山口シネマによって始められ、翌年の開催から導入されることになります。これは競走の公正性を高める上で重要な技術革新でした。

新しい競走の創設も行われました。12月3日には、現在の重要な2歳（旧3歳）競走の一つである第1回朝日杯3歳ステークスが開催され、初代優勝馬はアヅマホマレ、優勝騎手は八木沢勝美でした。さらに12月25日には、アラブ系の競走馬による東西対抗競走として第1回読売楯争奪アラブ東西対抗競走が行われ、タマツバキが土門健司騎手と共に初代覇者となりました。

主要競走の成績

1949年に施行された公認競馬の主な競走結果は以下の通りです。

第19回天皇賞（春）（京都競馬場・4月29日）優勝：ミハルオー（騎手：土門健司）
第9回桜花賞（京都競馬場・5月1日）優勝：ヤシマドオター（騎手：八木沢勝美）
第9回皐月賞（中山競馬場・5月3日）優勝：トサミドリ（騎手：浅野武志）
第16回東京優駿（日本ダービー）（東京競馬場・6月5日) 優勝：タチカゼ（騎手：近藤武夫）
第21回天皇賞（秋）（東京競馬場・11月3日）優勝：ニユーフオード（騎手：保田隆芳）
第10回菊花賞（京都競馬場・11月3日）優勝：トサミドリ（騎手：浅野武志）
第10回優駿牝馬（オークス）（東京競馬場・11月13日) 優勝：キングナイト（騎手：高橋英夫）

障害競走では、中山大障害が春と秋に施行されました。

第23回中山大障害（春）（中山競馬場・5月1日）優勝 : カミカゼ（騎手 : 高松三太）
* 第24回中山大障害（秋）（中山競馬場・12月4日）優勝：ブランドライト（騎手：坂内光雄）

新たな才能の誕生

この年には、後に日本の競馬史に名を刻むことになる競走馬や、競馬界で活躍する人物が多数誕生しています。この年に生まれた競走馬は、1952年のクラシック世代として競馬場を賑わせることになります。主な誕生馬としては、ガーサント（4月5日）、クインナルビー（4月13日）、レダ（4月19日）、スウヰイスー（5月3日）、クリノハナ（5月18日）、セントオー（5月27日）、タカハタ（6月3日）などがいます。また、将来JRAの調教師や騎手として活躍する、沖芳夫（2月28日）、作田誠二（3月7日）、嶋田潤（3月26日）、柴崎勇（5月2日）、山内研二（6月30日）、田村正光（8月23日）といった多くの人物がこの年に生を受けています。

総括

1949年は、国営競馬がその存在意義を確立し、運営体制を強化した年であると同時に、地方競馬との関係性や法制度にも変更が加えられ、戦後の日本競馬の基盤がより盤石なものとなった時期と言えます。多くの新しい競馬場が誕生し、技術の導入も進められました。東京優駿での大波乱は競馬の醍醐味を多くの人に伝え、新たな競走の創設は今後の競走体系に繋がる動きでした。この年に生まれた馬や人も、後の競馬界を彩る存在となっていきます。1949年は、日本競馬が新たな時代へと歩みを進めるための重要な一歩を踏み出した一年でした。

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