1954年兵庫県知事選挙

1954年兵庫県知事選挙の概要

1954年12月12日、兵庫県で行われた知事選挙は、県政の動向を大きく左右する重要な選挙でした。この選挙は、戦後の公選制導入後、兵庫県知事を選出する第三回の試みであり、県民の関心を集めました。これまでの二回は、岸田幸雄知事が革新系候補を破って当選してきましたが、今回は彼と副知事であった吉川覚との間に生じた大きな政争が背景にありました。

選挙前の背景

1947年に導入された公選制のもとで、岸田は安定した知事職を維持していましたが、1954年4月に吉川が岸田に対して突然告発を行い、県庁内での裏金づくりを指摘しました。この動きが公にされると、岸田は即座に告発を否定し、吉川を罷免します。この結果、県議会内に激しい内紛が起こり、吉川は岸田に辞任を求めるなど県政は混乱に陥りました。

もし吉川の告発が真実であれば、県政への信頼は大きく揺らぐものでした。しかし、後に明らかになったのは、吉川の告発が個人的な理由に基づいたものであり、逆恨みにより行われたものでした。このため、彼の信頼は急速に失われました。彼の告発において取り調べを受けた県庁の関係者の調査も進行しましたが、最終的には起訴猶予となり、将来的には何も裁かれることはありませんでした。

知事選の展開

岸田は告発後、任期を残した状態で選挙に打って出る決意を固めますが、国政では自由党内の混乱も影響し、支持基盤が揺らぎました。特に、元知事たちは岸田の再選出馬に疑問を呈し、場合によっては他の候補者を擁立する可能性も指摘されていました。対する革新陣営は、尼崎市長の阪本勝を社会党推薦候補として選ぶことに決定し、岸田に立ち向かう準備を整えました。

阪本は当初は慎重でしたが、岸田と湯沢の一致した意見に呼応し、出馬を最終的に決断しました。これにより、出直し選挙は岸田、吉川、阪本という三者の競争を迎えることとなり、投票日が設定されました。

選挙結果と影響

選挙の結果、投票率は61.03%で、前回よりも大幅に低下しました。これには年末の影響や、岸田と吉川の個人的な争いへの嫌悪感が影響したとされます。そんな中、阪本の支持が広がり、彼が当選を果たしました。これは兵庫県にとって革命的で、初めて革新系知事が誕生した瞬間でした。また、阪本は県出身として初めて知事の座に就く栄誉も手にしたのです。

この選挙の結果は、今後の地方政治や党派の動きに大きな影響を与え、特に保守陣営に深刻な疲弊をもたらしました。翌1958年の知事選挙では阪本の地位が確固たるものとなり、彼は圧倒的な支持を受けて再選を果たします。

選挙後の状況

選挙後、岸田と吉川はそれぞれ国政や新たな職に進んでいきました。岸田は参議院議員に転身し、吉川は衆議院選挙に挑戦しましたが、政治家としてのキャリアは乏しいものでした。この歴史的な選挙は、県政及び兵庫県の政治の流れを変え、いまなお語り継がれています。

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