1956年のテレビ (日本)

1956年のテレビジョン放送

1956年（昭和31年）は、日本のテレビジョン放送がその基盤を固め、全国へとネットワークを広げ始めた画期的な年でした。

放送網の拡大と新たな局の誕生

この年、日本のテレビ放送網は飛躍的に拡大しました。公共放送であるNHKは、前年に続いて主要な地方都市での開局を精力的に進めました。具体的には、3月22日に仙台と広島で、4月1日には福岡で、そして12月22日には札幌で、それぞれNHKのテレビ局が開局し、本放送を開始しています。これにより、テレビが視聴可能な地域は着実に広がりました。

一方、民間放送においても大きな動きがありました。それまで関東圏に集中していた民放テレビ局が、初めて関西と東海地方に進出しました。12月1日、大阪に大阪テレビ放送（現在の朝日放送テレビ）が、愛知には中部日本放送のテレビ部門（現在のCBCテレビ）が、それぞれ本放送を開始しました。特に中部日本放送は、当時のラジオ東京（後のTBS）に次ぐ、テレビ・ラジオ兼営の民放として2社目の開局となり、日本の放送業界における民放の多角化・地方展開の先駆けとなりました。

日本初の早朝放送開始

放送時間にも変化が現れました。日本テレビは8月19日、午前6時30分から日本で初めてテレビの早朝放送を開始しました。この早朝放送開始と同時に、画面に現在の時刻を表示する「時分テロップ」の表示も導入され、これも日本初の試みでした。

映画界との「五社協定」

テレビの普及は、既存のメディアである映画界に大きな影響を与えました。日本の主要映画会社5社（東映、東宝、松竹、大映、新東宝）は、テレビの影響力拡大を懸念し、「五社協定」に新たな項目を追加しました。10月1日から、テレビへの劇映画提供を打ち切るとともに、各社に専属する俳優のテレビ出演を厳しく制限することを決定したのです。これにより、テレビ局は放送する映像コンテンツの確保に迫られ、アメリカ合衆国などで制作されたテレビ映画を購入・放送する方向へと向かうこととなりました。この協定は、後に日活が加わり「六社協定」となるなど、長らく映画界とテレビ界の関係に影響を与えました。

NHK放送博物館の開館

テレビ放送の歴史を伝える施設も誕生しました。3月3日、東京・愛宕山の旧東京放送局跡地に、恒久的な施設としてNHK放送博物館が開館しました。これは、日本の放送史に関する貴重な資料を保存・展示し、一般に公開する最初の施設となりました。

技術と番組の進展

放送技術やインフラ面でも進展が見られました。電電公社（現在のNTT）は、主要都市間を結ぶテレビ用のマイクロ波回線を整備。3月には大阪-広島-福岡間が、10月には東京-仙台-札幌間が開通し、遠距離を結んだテレビ中継が可能となり、全国的なネットワーク化の基盤が築かれました。技術研究面では、NHK放送技術研究所がNTSC方式のカラーテレビ受信公開やスタジオ撮像公開を行い、将来のカラー放送に向けた研究が進められました。

番組編成においても、様々なジャンルの番組が登場しました。連続人形劇『チロリン村とくるみの木』（NHK）、バラエティ番組『雨・風・曇』（日本テレビ、後の『春夏秋冬』として長寿番組に）、初の外国テレビ映画『カウボーイGメン』（ラジオ東京テレビ）の放送開始など、多様なコンテンツが提供され始めました。また、スポーツ中継や報道番組も強化され、テレビの社会的な役割も高まっていきました。年末には、民放4局共同制作による初の『ゆく年くる年』が放送され、年末の風物詩となる礎が築かれました。

1956年は、新しい放送局の開局、放送時間の拡大、そして他のメディアとの関係性の変化など、今日のテレビ放送の基礎となる重要な出来事が数多く起こった一年と言えます。

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