1960年ミュンヘンC-131墜落事故

1960年ミュンヘンC-131墜落事故

1960年12月17日、西ドイツ（当時）のミュンヘンで発生した航空機墜落事故は、多数の犠牲者を出す悲惨な事故となりました。アメリカ空軍のコンベア C-131D-CO輸送機が、ミュンヘン・リーム空港を離陸直後にエンジン故障を起こし、市街地に墜落したのです。

事故の概要

事故が発生したのは、ミュンヘン・リーム空港からイギリスのRAFノースホルトへ向かう予定だったアメリカ空軍の輸送機でした。事故機には、乗員7名と、クリスマス休暇を利用してロンドンへ向かうメリーランド大学ミュンヘン校の学生13名が搭乗していました。離陸直後、機体の左エンジンが故障し、機体は制御不能に陥り、市街地に墜落。乗員乗客20名全員と、地上の市民32名が命を落とすという、当時の西ドイツにおける航空事故としては最悪の犠牲者数を記録しました。

事故機

事故を起こしたコンベア C-131D-CO（機体番号55-0291）は、1955年に製造されたレシプロエンジン機です。アメリカ空軍に所属し、最大44名の人員を輸送することができました。事故当時は、RAFノースホルトに配備されており、在欧アメリカ空軍の第3空軍の指揮下に入っていました。

事故の経緯

事故機は、13名の乗客と7名の乗員を乗せ、ミュンヘン・リーム空港を離陸しようとしていました。離陸前の点検で、パイロットはエンジンの不具合に気付いたものの、修正可能と判断し、飛行を継続することにしました。現地時間14時05分、濃霧の中、C-131はミュンヘン・リーム空港を離陸。しかし、離陸直後、2基搭載されたプラット・アンド・ホイットニー R-2800エンジンのうち、左側のエンジンが停止しました。パイロットは管制官にエンジン故障を伝え、空港への引き返しを要求しましたが、副操縦士が高度を維持しようとした際に、機体はルートヴィヒスヴォルシュタット＝イザールヴォルシュタット地区にある聖パウロ協会の尖塔に接触。そのまま制御を失い、バイエル通りを走行していた2台の路面電車に衝突しながら墜落。大爆発と火災が発生し、多くの犠牲者が出ました。

事故調査

アメリカ空軍主導で行われた事故調査の結果、燃料ポンプ内に水が混入していたことが判明しました。燃料タンクの底に溜まった水が凍結し、燃料供給を妨げたことがエンジン停止の原因と推測されました。さらに、事故機には必要以上の燃料が給油されていたことも判明。ロンドンまでの飛行時間から考えると、満タンに近い9.5時間分の燃料が積まれていたのは過剰であり、その理由については特定されませんでした。

事故後

事故直後には、ガソリンスタンドが爆発したという誤った情報も流れましたが、すぐに否定されました。事故の翌日、第3空軍は犠牲者のリストを公表し、追悼式が行われました。ミュンヘン市内ではクリスマスまでのイベントが自粛され、半旗が掲げられました。この事故は、1958年のミュンヘンの悲劇に続き、ミュンヘン・リーム空港の拡張工事中止の要因の一つとなりました。さらに、ミュンヘン市長は空港移設の検討を表明。1962年にはミュンヘン中心街上空の飛行が禁止され、飛行ルートが変更されました。その後、1969年に新しい空港の建設が決定し、1992年にミュンヘン空港が開港、ミュンヘン・リーム空港は閉鎖されました。

関連項目

ブリティッシュ・エアウェイズ38便事故
キャセイパシフィック航空780便事故


この事故は、航空機の安全対策における燃料系統の管理や、過剰な燃料積載の危険性など、多くの教訓を私たちに残しました。

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