1961年のラジオ (日本)

1961年の日本のラジオ界

1961年は、日本のラジオ放送が新たな技術への挑戦と、組織的な変化に直面した年でした。特に、音響技術の進化を示すステレオ放送の試みが注目を集め、同時に地方の多くのラジオ・テレビ兼営局で社名変更が行われるなど、業界全体が動きを見せました。

音響技術の新時代：ステレオ放送への挑戦

この年、NHKはステレオ（立体）放送の実用化に向けた実験的な取り組みを進めました。元旦には、ラジオ第1と第2の二つの電波（それぞれ左チャンネルと右チャンネル）を使用した初の新春特別番組として、「新春ステレオホール」を放送。従来のモノラル放送とは異なる、より臨場感のある音響体験をリスナーに届けようとする試みが開始されました。

さらに5月3日には、クラシック音楽における立体放送の可能性を探る画期的な番組が放送されました。「ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団立体コンサート」と題されたこの特別番組では、ベートーヴェン作曲の交響曲第9番「合唱」が、立体放送としては初めて全楽章にわたって放送されました。これは、クラシック音楽の奥行きや広がりを表現する上で、ステレオ技術が持つ可能性を示す重要な一歩となりました。

また、定期番組としても、4月7日からはNHKラジオ第1・第2で「夜のステレオ」が開始され、ステレオ放送による音楽番組が提供される機会が増えました。

地方局の再編：商号変更の波

1960年11月にラジオ東京が「東京放送」（TBS）へと社名を変更した流れを受け、1961年には地方のラジオ・テレビ兼営局においても商号変更が相次ぎました。これは、テレビ放送の普及・拡大に伴い、放送局の事業内容をより明確に示す意図があったと考えられます。

この動きは3月1日にラジオ新潟が「新潟放送」（BSN）に変わったのを皮切りに、年内にかけて以下の各局で実施されました。

3月1日：ラジオ新潟 → 新潟放送
4月1日：ラジオ大分 → 大分放送
5月29日：ラジオ東北 → 秋田放送
6月1日：ラジオ山陰 → 山陰放送、ラジオ山口 → 山口放送、ラジオ熊本 → 熊本放送
7月1日：ラジオ宮崎 → 宮崎放送
9月1日：ラジオ山梨 → 山梨放送
10月1日：ラジオ南日本 → 南日本放送
10月28日：ラジオ青森 → 青森放送

これらの変更により、多くの地方局が「放送」という名称を冠するようになり、現在の放送局名の基盤が形成されました。

新たな番組の登場

1961年には、各局で多様なジャンルの新番組が開始されました。教育分野では、NHKラジオ第2で4月4日から「大学通信講座」が始まり、放送による高等教育への道を開きました。

エンターテインメント分野では、NHKラジオ第1で4月3日から、現在まで続く長寿番組「みんなのうた」が放送を開始。子供から大人まで楽しめる歌と映像（当時はラジオなので歌のみ）を提供する番組として親しまれることになります。

TBSでは、2月13日に「三菱ダイヤモンドハイウェイ」、6月6日に「東京午後8時」といった番組がスタート。ニッポン放送では11月1日に「フレッシュイン東芝 ヤング・ヤング・ヤング」が始まるなど、民放各局もリスナーに向けた新たな企画を展開しました。

その他、RKB毎日放送で「あなたの意見は」（3月）、大阪放送で「漫才バラエティー」（9月22日）、NHKラジオ第1で「朝のおくりもの」「キャンデーの冒険」（ともに10月2日）、NHK-FMで「NHKニュース」（11月6日）などが放送を開始しました。

時代の節目：終了した番組

一方で、長寿番組や人気番組の中にはその歴史に幕を閉じたものもありました。文化放送の「サンヨー・リクエスト・イン・ハイファイ」が2月26日に、NHKラジオ第1の「輝くステージ」が3月31日に、朝日放送の「漫才教室」が7月30日にそれぞれ放送を終了しました。

まとめ

1961年は、NHKがステレオ放送という新しい音響技術の実用化に向けた第一歩を踏み出した技術革新の年であり、同時に地方の多くの放送局がその名称を改め、組織体制を整備した再編の年でもありました。新旧の番組が交錯し、日本のラジオ放送が未来に向けて変化を続けた一年だったと言えるでしょう。

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