1962年の航空

1962年は、航空と宇宙開発が飛躍的な進歩を遂げた年です。技術の限界に挑む記録飛行、宇宙への新たな一歩、軍事技術の革新、そして民間航空の成熟を示す出来事が相次ぎました。

記録飛行と高高度飛行

特筆すべき飛行記録として、年初にはアメリカ空軍のB-52H戦略爆撃機が、沖縄からスペインのマドリードまでの20,168キロメートルを無着陸無給油で飛行し、長距離記録を樹立しました。操縦士はクライド・P・イヴリー大尉です。また、3月にはアメリカ空軍の超音速爆撃機B-58ハスラーが、ニューヨークとロサンゼルス間を平均速度2,708 km/hで横断、4時間41分15秒という速度記録を打ち立て、乗組員はマッケー・トロフィーとベンディクス・トロフィーを受賞しました。7月にはソビエト連邦のテストパイロット、ゲオルギー・モソロフがMiG-21改造型Ye-166で2,691 km/hの周回飛行記録を樹立しています。高高度飛行では、7月17日にアメリカ空軍のロバート・M・ホワイト大尉が実験機X-15で高度96 kmに到達しました。

宇宙開発の進展

宇宙開発では歴史的な出来事が続きました。2月20日、マーキュリー計画においてジョン・グレンがアメリカ人として初めて地球周回軌道飛行を成功させました。惑星探査も進み、8月27日に打ち上げられたアメリカの金星探査機マリナー2号は、12月14日には金星への接近に成功し、観測データを地球に送信しました。さらに、宇宙への参加国が広がり、9月29日にはカナダが開発した人工衛星アルエット1号がアメリカのロケットで打ち上げられ、ソビエト連邦とアメリカ合衆国以外で初めて軌道上に投入された人工衛星となりました。

軍事技術と新たな機体

軍事関連では、1月25日に中華人民共和国空軍の八一飛行表演隊が正式に設立されました。5月6日には米潜水艦イーサン・アレン（SSBN-608）から戦略ミサイル「ポラリス」が発射され、水中からの核戦力展開能力が実証されました。7月19日には米国の地対空ミサイル「ナイキ・ゼウス」が7,250 km離れた弾道ミサイルの迎撃に成功し、ミサイル防衛技術の一端を示しました。新たな軍用機としては、6月29日に組み立て式の単座ヘリコプター、ドイツのドルニエDo 32が初飛行しました。また、アポロ計画のために巨大なロケット部品を輸送する特異な形状の大型貨物機、プレグナントグッピーも9月19日に初飛行しています。

民間航空の発展

民間航空分野も活況を呈しました。8月30日には、日本の航空機産業復興の象徴である初の国産ターボプロップ旅客機YS-11がその姿を現し、初飛行を成功させました。フランス製のジェット旅客機シュド・カラベルは、8月31日に最初の商業飛行を開始し、欧州を中心に中距離路線で普及が進みました。そして、将来の超音速旅客機時代の幕開けを告げる出来事として、11月29日にはフランスとイギリスの間でコンコルド共同開発の正式契約がロンドンで締結されました。年末の12月24日には、フランスのノール・アビアシオン社が開発したノール262旅客機も初飛行を行っています。

航空分野の栄誉

これらの功績に対し、航空分野の栄誉が称えられました。ハーモン・トロフィーはフィッツヒュー・フルトン Jr.とニニ・ボースマンが受賞しました。デラボー賞には、記録飛行や宇宙飛行などで顕著な功績を上げたソビエト連邦とアメリカ合衆国のパイロットや宇宙飛行士たちが名を連ねています。ゲオルギー・モソロフ、クライド・P・イヴリー、ウィリアム・M・スティーブンソン、ジョセフ・A・ウォーカー、ロバート・M・ホワイト、P. オスタペンコ、ウラジミール・S・イリオーチン、アンドリアン・ニコラエフといったパイオニアたちが、それぞれの偉業を認められました。

1962年は、航空技術が音速を超え、宇宙空間への到達が現実となり、そして世界中で新しい航空機の開発が進むなど、まさに現代航空史の基礎が築かれた重要な転換点であったと言えるでしょう。

もう一度検索