1965年の日本

1965年（昭和40年）の日本

1965年（昭和40年）は、高度経済成長期真っ只中にあり、日本の社会構造や生活様式に大きな変化がもたらされた年として記憶されています。この年は、西暦の他に皇紀2625年、干支は乙巳（きのとみ）にあたります。

政治・社会の動向

この年の内閣総理大臣は佐藤栄作氏でした。政治面では、東京都議会議員選挙を巡る贈収賄事件が発覚し、多くの都議会議員が逮捕される「東京都議会黒い霧事件」が発生しました。これにより、地方公共団体の議会の解散に関する特例法が急遽制定され、東京都議会は初めての自主解散に追い込まれるという異例の事態となりました。

外交においては、6月には韓国との間で日韓基本条約および財産・請求権に関する協定が締結され、戦後処理に一区切りがつきました。国内の社会運動としては、アメリカのベトナムへの北爆に反対する市民グループ「ベ平連」が結成されたほか、原水爆禁止運動においても組織の分裂が見られました。

また、8月には当時の総理大臣として初めて佐藤栄作氏が沖縄県を訪問しました。これは、本土復帰前の沖縄に対する中央政府の関心を示す重要な出来事でした。

この年は、全国各地で凶悪事件や自然災害も発生しました。夏には吉展ちゃん事件の被害者遺体が発見され、同年後半には西日本を中心に高齢者を狙った連続殺人事件（古谷惣吉事件）が発生し、社会に衝撃を与えました。自然現象では、長野県松代町で松代群発地震が始まり、約5年間にわたって継続することとなります。7月には集中豪雨により各地で被害が出たほか、10月にはマリアナ海域で漁船が集団遭難する痛ましい事故が発生しました。

経済と産業

経済面では、高度成長を支える産業活動が活発に行われましたが、一方で山陽特殊製鋼の倒産など、厳しい局面も見られました。共同石油が設立されたほか、製薬や食品、化粧品業界などからオロナミンC、つゆの素、サンオイル、アイスノン、エメロンシャンプー、テンダーリンスといった現在もお馴染みの商品が次々と発売され、消費文化の多様化が進みました。また、11月には戦後初めて赤字国債の発行が閣議決定され、財政運営の新たな局面を迎えました。

交通とインフラ

交通網の整備が大きく進んだ一年でした。7月には名神高速道路が全線開通し、東西を結ぶ大動脈が完成しました。国産初の旅客機YS-11が営業運転を開始し、日本の航空史に新たな一歩を記しました。都市交通では、小倉空港（後の北九州空港）が開港したほか、大阪や名古屋で地下鉄の延伸や新線が開業しました。鉄道においては、国鉄がみどりの窓口を開設し、また大規模なダイヤ改正を実施しました。一方で、地方の赤字路線では山鹿温泉鉄道や名鉄一宮線など、複数の路線がこの年限りで廃止されています。

科学と文化

科学分野では、東京教育大学の朝永振一郎氏のノーベル物理学賞受賞が決定するという慶事がありました。自然科学の分野では、沖縄の西表島で新種のヤマネコが発見され、「イリオモテヤマネコ」と命名されました。宇宙では、日本人である池谷薫氏と関勉氏がほぼ同時に新しい彗星を発見し、「池谷・関彗星」としてその名を残しました。

文化・メディア面では、中部日本新聞が中日新聞に題号を変更したほか、大手新聞社で日曜日の夕刊休止が始まりました。テレビでは、NHKの「スタジオ102」、フジテレビの「小川宏ショー」、日本テレビの「11PM」といった長寿番組が放送を開始しました。特にアニメーション分野では、日本初のカラーテレビアニメとなる手塚治虫原作の「ジャングル大帝」や、藤子不二雄原作の「オバケのQ太郎」といった、後世に影響を与える作品が放送開始されました。

スポーツ

スポーツ界でも歴史的な出来事がいくつかありました。プロ野球では、セ・リーグは巨人が、パ・リーグは南海がそれぞれ優勝し、日本シリーズでは巨人が南海を下して日本一となりました。この年には、プロ野球界に新たな選手の獲得制度として第1回ドラフト会議が開催され、その後の球団運営や選手のキャリアに大きな影響を与えることになります。また、サッカーでは日本サッカーリーグ（JSL）が開幕し、日本のサッカーがプロ化への道を歩み始める第一歩となりました。国際舞台では、F1メキシコGPでホンダが初優勝を飾り、日本の自動車産業の技術力を世界に示しました。

1970年大阪万博の決定

この年の大きな出来事として、1970年に日本万国博覧会（大阪万博）が大阪で開催されることが決定し、テーマも「人類の進歩と調和」に決まりました。これは、戦後の復興を遂げた日本の国際社会へのプレゼンスを示す国家的プロジェクトの始まりとなりました。

1965年は、経済成長が続く中で、インフラの整備、消費文化の発展、メディアの多様化など、現代日本に繋がる様々な変化が顕在化した年であり、同時に社会問題や自然の脅威にも直面した、多層的な一年であったと言えるでしょう。

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