1967年イタリアグランプリ

1967年イタリアグランプリ：ホンダRA300のデビューと劇的な勝利

1967年9月10日、イタリア・モンツァ・サーキット。F1世界選手権第9戦、そして27回目のヨーロッパグランプリとして開催されたこのレースは、数々のドラマと、ホンダの挑戦によって彩られました。

ホンダRA300：急造マシンがモンツァに挑む

ホンダは、重量過多で整備性の悪かったRA273に代わる新車、RA300の開発を急いでいました。ローラ社との協力のもと、インディ500用マシンをベースにわずか1ヶ月で製造されたRA300は、8月31日に完成。グッドウッド・サーキットでシェイクダウンを行い、そのままモンツァへと向かいました。この急造マシンは、ホンダとローラの合作から「ホンドーラ」と揶揄されることもありました。

豪華なエントリーリスト

このレースには、多くの名ドライバーがエントリーしました。前年優勝者のルドビコ・スカルフィオッティはフェラーリから離れ、イーグルで参戦。フェラーリは軽量化された4バルブエンジンを搭載したマシンをクリス・エイモンに託しました。クーパーは、負傷中のペドロ・ロドリゲスの代わりにジャッキー・イクスを起用。さらに、地元出身のジャンカルロ・バゲッティがチーム・ロータスから参戦するなど、華やかな顔ぶれとなりました。

予選：ロータス勢の圧倒的な速さ

ロータス・49のジム・クラークは、抜群の速さでポールポジションを獲得。フロントローにはブラバムとマクラーレン、2列目にはエイモンとガーニー、そして3列目にはハルム、スチュワート、ヒルと、そうそうたるメンバーが並びました。一方、サーティースはRA300のトラブルに見舞われながらも、RA273で練習走行を行い、4列目9番グリッドからのスタートとなりました。

決勝：ドラマチックな展開とサーティースの勝利

スタート直後はブラバムがリードしましたが、すぐにガーニーがトップに立ちます。その後、クラーク、ヒル、マクラーレン、スチュワート、ハルムが続きます。レース中盤、クラークはタイヤパンクによりピットインを余儀なくされ、大きく順位を落とします。一方、先頭集団ではトップ争いが激しく展開。ハルムが一時トップに立ちますが、エンジントラブルでリタイア。その後、ヒルがトップを走り、ブラバム、クラークが追いかける展開になります。

サーティースは中位グループを走行しながら着実に順位を上げていきます。クラークが猛追を見せ、ヒルがリタイアしたことで2位に浮上。そして、ブラバムをも抜き、トップに躍り出ました。しかし、クラークが燃料ポンプのトラブルに見舞われ、順位を落とすと、サーティースとブラバムの一騎打ちとなります。

最終ラップ、最終コーナー「パラボリカ」でブラバムがサーティースに迫りますが、コース上にオイルが撒かれており、ブラバムはコースアウト。この隙を突いたサーティースがトップでフィニッシュ。ホンダRA300のデビューウィン、そしてサーティースの1965年メキシコGP以来となる2勝目を手にしました。僅差の2位にはブラバムが入り、コンストラクターズチャンピオンシップはブラバムが2連覇を決めました。

サーティースの勝利は、イタリアの観客にとって大きな喜びとなりました。表彰式では、亡くなったロレンツォ・バンディーニの未亡人から優勝カップが授与されました。このレースは、ホンダの挑戦、ロータス勢のトラブル、そしてサーティースの劇的な勝利と、多くのドラマが凝縮された、忘れられない一戦となりました。

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