1968年のテレビ (日本)

1968年（昭和43年）は、日本のテレビ放送にとって、その後の発展を決定づける重要な転換点となりました。この年の大きな特徴は、UHF（極超短波）放送の本格的な開始と、番組のカラー化が飛躍的に進んだことにあります。

UHF局の開局と多局化

この年から、親局としてのUHFアナログ放送（13〜62チャンネル）が本格的にスタートしました。2月には日本で最初のUHF局となるNHK徳島教育テレビジョンが放送を開始。そして8月には、民放としては初のUHF親局であり、初の独立放送局でもある岐阜放送が開局しました。これを皮切りに、全国各地で新しいUHF局が次々と誕生します。特に、これまで民放テレビ局が1局しかなかった地方において、初めて2局以上の民放テレビが視聴可能になる地域が増え始めました。例えば、新潟県の新潟総合テレビ（現在のNST新潟総合テレビ）や静岡県のテレビ静岡がこの年に開局し、翌1969年にはこの流れがさらに加速していきます。

新しいUHFテレビ放送を受信するためには、視聴者側にも準備が必要でした。UHF対応のアンテナを新たに設置する必要があったほか、以前のVHF（超短波）専用テレビでは受信できなかったため、UHFコンバータという専用機器を取り付ける必要が生じました。この年に発売された多くのカラーテレビにはUHF受信機能が内蔵されていましたが、それ以前の機種ではコンバータが必須でした。

加速する番組のカラー化

前年から始まっていたテレビ番組のカラー化は、1968年に一層勢いを増しました。NHKが4月からカラー契約（白黒の普通契約より高額）を導入したことが、カラー放送普及の大きな後押しとなりました。NHKは、視聴者が多く見る時間の娯楽番組を中心にカラー化を重点的に進め、連続テレビ小説もこの年度からカラー放送となりました。

民放各局もカラー放送への対応を急ぎました。NET（現在のテレビ朝日）、毎日放送、中部日本放送（CBC）、東海テレビ放送、北海道放送（HBC）、札幌テレビ放送（STV）、九州朝日放送、青森放送などがスタジオカラーカメラを導入し、カラー制作 capability を獲得しました。また、これらの局に加えて朝日放送（ABC）もカラー中継車を導入。さらに、在京キー局の一つである東京12チャンネル（現在のテレビ東京）もこの年にカラー放送を開始し、在京民放キー局のカラー化が出揃いました。

ニュース番組でもカラー化が進み、TBSをキー局とするJNN系列を中心に、地方局でもローカルニュースのカラー化が始まりました。また、NHK総合テレビの全国ニュースもこの年から全ての時間帯でカラー放送となりました。

この年に開催されたグルノーブル冬季オリンピックとメキシコオリンピックの中継は、そのほとんどがカラーで放送され、特にグルノーブルオリンピックの開会式は、オリンピック中継としては初めてカラーで衛星生中継されるという画期的な出来事もありました。

既存の人気番組でも次々とカラー化が行われました。日本テレビの『キユーピー3分クッキング 日本テレビ制作版』や『11PM』、NETの『象印スターものまね大合戦』、毎日放送の『真珠の小箱』などがカラー化。フジテレビの『スター千一夜』も一部例外を除き毎回カラー放送となり、高校野球の全国大会中継も民放でカラー化が始まりました。TBSの『東芝日曜劇場』や『ザ・ガードマン』でもカラー制作回が増加し、民放の年越し番組『ゆく年くる年』もこの年からカラー放送が始まりました。

カラー放送技術の進化も進み、東芝とTBSが共同で開発したスタジオカラーカメラ「PK-31」は、多くの放送局に導入され、長年にわたって活躍しました。

新番組・人気番組の動向

1968年には、テレビ史に名を残す多くの番組が誕生しました。読売テレビ・日本テレビ系のカラーアニメ『巨人の星』は「スポ根」ブームの火付け役となり、関西テレビ・フジテレビ系のカラー時代劇『大奥』は「女性時代劇」というジャンルを確立しました。TBSのアクションドラマ『キイハンター』は6年にわたる人気シリーズとなり、フジテレビの生放送歌謡番組『夜のヒットスタジオ』は22年の長寿番組となりました。クイズ番組ではNHK総合の『連想ゲーム』やTBSの『お笑い頭の体操』が始まり、フジテレビのワイドショー『3時のあなた』も放送を開始しました。

一方で、長年にわたり親しまれた番組が幕を閉じる出来事もありました。NHK総合のクイズ番組『ジェスチャー』は15年の歴史に終止符を打ち、朝日放送・TBS系の公開コント番組『てなもんや三度笠』も足かけ6年の放送を終了しました。また、カラー特撮ヒーロードラマ『ウルトラセブン』も最終回を迎え、ウルトラシリーズは一時中断となりました。

番組以外のできごとでは、金嬉老事件においてNHK総合のニュース番組が生放送で犯人との対話を試みるという特異な対応が見られました。また、年末の『第10回日本レコード大賞』は、モノクロで中継された最後の大賞となりました。

この年の年間視聴率（関東地区）では、TBSがゴールデンタイムで1963年から6年連続となる首位を獲得しています。単独番組では、NHK紅白歌合戦が76.9%という圧倒的な数字を記録したほか、オリンピック中継やボクシング世界タイトルマッチも高い視聴率を獲得しました。

その他の主な出来事

テレビ業界全体の動きとしては、各地で新規放送局の設立が相次ぎました。北海道テレビ放送や新潟総合テレビ、テレビ静岡などが開局し、UHFによる放送網が拡大していきました。経営面では、日本科学技術振興財団テレビ事業本部（東京12チャンネル）の再建策として、株式会社東京12チャンネルプロダクション（現在のテレビ東京）が設立されています。

また、ソニーが「トリニトロン」方式のカラーテレビ「KV-1310」を発売し、その優れた発色性能が注目を集め、ブラウン管テレビの歴史において画期的な製品となりました。

自然災害がテレビ放送に影響を与えた例として、十勝沖地震によるマイクロ回線途絶が発生しましたが、早期復旧や迂回ルート、代替手段（フィルム・VTRの空輸計画）によって対応されました。

1968年は、UHF化とカラー化という技術的・インフラ面の進展が、視聴環境の多様化と番組コンテンツの豊かな発展をもたらし、テレビが日本の社会と文化にますます深く根ざしていく過程において、大きな節目となった一年でした。

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