1968年の映画

1968年の映画動向

1968年、日本の映画界は国内外でさまざまな変革の兆しを見せました。この年は、映画制作、上映、配給において重要な出来事が相次ぎ、映画がより多様な表現を追求することとなりました。

世界の映画動向

1968年3月28日、東和社の社長、川喜多長政はフランス政府からレジオンドヌール勲章を受章しました。これは映画界における彼の貢献を評価したもので、国際的に認められる出来事でした。5月には、カンヌ国際映画祭の開催が予定されていましたが、ジャン＝リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォー監督らによる五月革命に同調する反対運動により、中止されることになりました。

10月にはウズベキスタンで第1回タシケント映画祭が開催され、邦画の5社が参加しました。11月1日にはMPAAの映画レイティング・システムが導入され、映画の分類がより分かりやすくなり、視聴者にとっての選択肢の幅が広がりました。アメリカのコロムビア・ピクチャーズが総合産業へと変わったことも、映画界の動向に大きな影響を与えました。

日本の映画界の出来事

日本では、1968年の映画界においても多くの注目すべき出来事がありました。1月3日には『人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊』と『喜劇初詣列車』が封切り、ヒットを記録しました。また、2月には三船プロダクションと石原プロモーションによるタイアップ映画『黒部の太陽』が公開され、記録的なヒットを記録しました。これは映画界の新たな可能性を示す例となりました。

同月中には新たに岩波ホールが開場し、フランス映画社も設立されて、日本国内の映画製作環境が活発化しました。「日活撮影所が16億円で売却」という報道が流れる中、3月16日には『日本のいちばん長い日』が文部省青少年映画賞の最優秀賞を受賞しました。

カラー化が進んだテレビ放送は、映画産業にとっても新たな挑戦でした。特に4月1日には東京第一フィルムと大映洋画部が合併し、「大映第一フィルム」が設立され、映画製作の体制が整いました。

5月にはアメリカから返却されたドキュメンタリー映画『広島・長崎における原子爆弾の影響』がテレビ上映されるなど、社会問題を扱った作品が注目されました。

7月21日には、高畑勲監督による『太陽の王子 ホルスの大冒険』が封切られ、アニメーション映画の可能性を広げる結果となりました。特に夏には、「侠客列伝」や「盛り場ブルース」など続々とヒット作が封切られ、映画の多様化が進みました。

映画興行の動向と総括

1968年の日本映画市場を振り返ると、入場料金は大人450円、入場者数は3億1340万人に達しており、興行収入は820億2600万円という大きな数字を記録しました。この年は、映画だけでなく、社会全体の変革の中で映画の役割がいかに変わっていくかを示す大きな転換点であったと言えるでしょう。

また、日本配給収入ランキングでのヒット作の増加や、洋画と国内映画との多様な競争も、業界全体の成長を促す要因となりました。

このような1968年の映画状況は、次世代の映画製作に影響を与え、その後の映画界の発展へとつながる基盤を築いたのでした。

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