1969年のロードレース世界選手権

1969年FIMロードレース世界選手権：激動のシーズン

1969年のロードレース世界選手権は、第21回大会として5月にスペイン・ハラマ・サーキットで開幕し、ユーゴスラビアGPで幕を閉じました。フランスGPの復活とユーゴスラビアGPの初開催により、全12戦という大規模なシリーズとなりました。この年は、ポイントシステムとレギュレーションの大幅な変更によって、選手権の歴史に大きな転換点が訪れたシーズンとして記憶されています。

ポイントシステムとレギュレーションの変更

まず、ポイントシステムが変更されました。従来は6位までポイント対象でしたが、この年から10位までポイントが与えられるようになり、1位は8点から15点に増加しました。この変更により、ランキングに名を連ねるライダーの数は大幅に増加しました。有効ポイント制は従来通り、上位数戦のポイントが有効とされました。

さらに、マシンレギュレーションが大幅に変更されました。1949年の選手権開始以来、過給機使用禁止以外、排気量さえ守れば自由な設計が許されてきたマシン開発は、技術競争の激化によって多気筒化、多段化が進み、市販車とはかけ離れたマシンが登場するようになりました。FIMは、技術開発の行き過ぎと、強大な資本力を持たないチームの不利を解消するため、エンジンの気筒数とギヤボックスの段数を制限する新たなレギュレーションを発表しました。

ワークスチームの撤退とプライベーターの台頭

このレギュレーション変更により、日本のメーカーであるホンダ、スズキに続き、ヤマハもワークスチームの活動を休止しました。これにより、ヨーロッパの小さなファクトリーのマシンを駆るライダーたちに大きなチャンスが訪れました。一方で、ヤマハやカワサキは新レギュレーションに適合した市販車をリリースし、多くのプライベーターたちに歓迎されました。

各クラスの戦いを振り返る

500ccクラスでは、MVアグスタのジャコモ・アゴスチーニが全出場レースで優勝するという圧倒的な強さでタイトルを獲得しました。アゴスチーニ不在のレースでは、アルベルト・パガーニとゴドフリー・ナッシュがそれぞれ初優勝、最後の優勝を飾りました。

350ccクラスでは、前年250ccクラスでヤマハのチームオーダーに不満を持っていたビル・アイビーが、ヤワから参戦。アゴスチーニとタイトルを争う展開が期待されましたが、東ドイツGPの予選中に事故で亡くなるという悲劇に見舞われました。アイビーの死後、アゴスチーニは残りのレースを制し、2年連続のタイトルを獲得しました。

250ccクラスは、ヤマハのワークス撤退により、ケント・アンダーソン、ケル・キャラザース、サンチャゴ・ヘレロらが激しいタイトル争いを繰り広げました。最終戦まで優勝者が入れ替わる接戦となり、最終的にキャラザースがベネリでタイトルを獲得しました。このタイトルは、ベネリの4気筒マシン、そして4ストロークマシンが獲得した最後の250ccタイトルとなりました。

125ccクラスでは、カワサキの市販マシンKA-Iを駆るデイブ・シモンズが、カワサキと自身にとって初のタイトルを獲得しました。シモンズは8勝を挙げ、MZの新型マシンを苦しめました。このタイトルにより、日本メーカーは125ccクラスのマニュファクチャラーズ・タイトルを9年連続で獲得しました。

50ccクラスは、デルビ、クライドラー、ヤマティの3メーカーが激しい争いを展開。最終的に、アンヘル・ニエトがデルビで初タイトルを獲得し、デルビは日本車以外では初の50ccマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得しました。

1969年シーズンは、レギュレーション変更による勢力図の変化、そしてアイビーの悲劇など、様々な出来事が織りなすドラマチックなシーズンとなりました。この年は、ロードレース世界選手権の歴史において、大きな転換期となった年として記憶されています。

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