1969年カナダグランプリ

1969年カナダグランプリ：モスポートで繰り広げられた激戦とドラマ

1969年9月20日、カナダ・モスポート・インターナショナル・レースウェイ。F1世界選手権第9戦、カナダグランプリが開催されました。このレースは、90周にわたる激戦と、予想だにしないドラマチックな展開で多くの観客を魅了しました。

前年モントランブラン・サーキットで開催された後、2年ぶりにモスポート・パークに戻ってきたこのレースは、イタリアグランプリから2週間後の開催というタイトなスケジュールで行われました。多くのチームが意欲的に参戦し、レースは多様なマシンとドライバーによって彩られました。

注目すべきエントリーとマシンの多様性

このレースの特徴として、複数のチームが3台目のマシンを投入したこと、そして様々なタイプのマシンが参戦したことが挙げられます。チーム・ロータスは四輪駆動車63をジョン・マイルズに、マトラも四輪駆動車MS84をジョニー・セルボ＝ギャバンに託しました。さらに、地元出身のビル・ブラックがBRM P138で参戦するなど、地元の期待も高まりました。

不振に喘いでいたフェラーリは、北米代理店であるノースアメリカン・レーシングチーム（NART）を通じてペドロ・ロドリゲスを312で参戦させました。また、地元カナダ出身のドライバーとして、Can-Amドライバーのジョン・コーズ（ブラバム・BT23B）、アル・ピース（イーグル・T1F）がエントリー。彼らは古いクライマックスFPFエンジンを使用しましたが、このレースが同エンジンの最後の使用、そしてイーグルマシンの最後の出走となりました。

予選：イクスの優位、そしてフロントローの顔ぶれ

予選では、ブラバムのジャッキー・イクスが圧倒的な速さでポールポジションを獲得。マトラのジャン＝ピエール・ベルトワーズ、ロータスのヨッヘン・リントとともにフロントローを形成しました。既にチャンピオン獲得が確定していたジャッキー・スチュワート（マトラ）はデニス・ハルム（マクラーレン）と共に2列目、ブラバムのジャック・ブラバム、ロータスのグラハム・ヒル、ジョー・シフェール（ロブ・ウォーカー）が3列目を占めました。

決勝：激しい首位争いと予期せぬ結末

スタートではリントがトップに立ちましたが、スチュワートが次々とライバルを抜き去り、6周目には首位に躍り出ました。その後、イクスとスチュワートによる激しい首位争いが展開されました。両者の激しいバトルの最中、33周目にスチュワートとイクスはアル・ピースと接触。スチュワートはマシンを修復できずリタイア、イクスは首位を奪取しそのまま優勝を飾りました。

一方、イクスのチームメイトであるジャック・ブラバムは、60周目にリントを抜き去り2位でフィニッシュ。ブラバムチームは2年ぶりの1-2フィニッシュを達成しました。この1-2フィニッシュは、次の達成まで5年もの歳月を要することになります。

ペースが遅すぎると判断されたアル・ピースは黒旗で失格。F1の歴史上、この理由で失格となったのは彼のみという異例の事態となりました。一方、セルボ＝ギャバンはマトラ・MS84で6位に入賞。四輪駆動F1マシンで唯一ポイントを獲得したドライバーとなりました。

まとめ：伝説に残るカナダグランプリ

1969年カナダグランプリは、イクスのポール・トゥ・ウィン、ブラバムチームの1-2フィニッシュ、そしてスチュワートのリタイア、セルボ＝ギャバンの快挙、ピースの失格など、様々なドラマが凝縮されたレースでした。このレースは、F1の歴史における重要な一戦として、長く記憶されることでしょう。 多くの要因が絡み合い、勝利への道筋は常に予期せぬ展開を迎え、観る者を飽きさせないレースとなりました。

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