1970年の広島東洋カープ

1970年の広島東洋カープ

1970年の広島東洋カープにとって、このシーズンは根本陸夫監督が指揮を執る3年目の重要な一年でした。前年、1968年の球団初のAクラス入りから一転、セ・リーグ最下位に転落したチームは、根本監督のもとで根本的な体質改善を目指していました。

チーム改革のため、根本監督は前年オフから積極的な戦力補強を進めるとともに、コーチ陣容を大幅に刷新しました。ヘッドコーチには根本監督の盟友である関根潤三氏を、守備走塁コーチには読売ジャイアンツの名遊撃手として鳴らした広岡達朗氏を招聘。この強力なコーチ陣による新たな体制への期待が高まりました。

しかし、迎えた1970年シーズンは厳しい現実が待っていました。開幕から、前年まで5年連続リーグ優勝の読売ジャイアンツと、阪神タイガースが熾烈な優勝争いを展開。カープは両チームの争いに割って入ることができず、序盤から苦戦を強いられます。特に、5月18日の対ジャイアンツ戦では、相手投手の渡辺秀武投手にノーヒットノーランを許す屈辱も味わいました。

チーム状況は好転せず、7月に入ると順位を落とし、シーズン終了までBクラスから抜け出すことができませんでした。

チームが低迷する中で、個々の選手は奮闘を見せました。投手陣では、安仁屋宗八、外木場義郎、白石静生、大石弥太郎といった先発陣が「四本柱」としてチームを支え、Bクラスに沈んだチームにあって、それぞれが一定の勝ち星を重ねました。打撃陣では、ベテラン古葉竹識選手が南海ホークスへ移籍したことで、三村敏之選手や井上弘昭選手といった若手選手たちに出場機会が巡ってきました。彼らはこのチャンスを活かそうと努めました。また、プロ2年目の捕手である水沼四郎選手も、正捕手争いをしていた田中尊選手や久保祥次選手といった先輩捕手の存在がありながらも、着実に自身の出場機会を増やし、経験を積んでいきました。

しかし、こうした若手選手の積極的な起用や、シーズン前の新戦力投入も、チーム全体の成績向上には繋がらず、起爆剤とはなり得ませんでした。体質改善や世代交代への取り組みは道半ばであり、チームは思うような結果を残すことができませんでした。

最終的に、1970年シーズンの広島東洋カープは、セ・リーグ4位という結果に終わりました。これは、読売ジャイアンツに6年連続となるリーグ優勝を許すことと同義であり、目標であった「巨人・阪神への挑戦」は叶いませんでした。

シーズン終了後には、チームにとって大きな出来事がありました。長年チームを支え、後進の若手選手たちに多大な影響を与えたベテラン打者・山内一弘選手が現役を引退したのです。山内選手が背負った栄光の背番号「8」は、翌シーズンから、将来のチームの中心として期待される若き主砲候補・山本浩二選手に引き継がれることとなり、チームは新たな時代へと歩みを進めることになります。

1970年シーズンは、根本体制におけるチーム改革の難しさと、世代交代を進める中で経験する産みの苦しみが浮き彫りになった一年でした。期待されたコーチ陣の招聘や若手起用も、即座に結果に繋がるわけではなく、チーム全体としてまだ成熟には時間を要することが示されたシーズンと言えるでしょう。

（参考資料に基づく記述であり、チーム成績等の詳細情報は割愛しています。）

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