1970年スペイングランプリ

1970年スペイングランプリ：混乱とドラマに彩られたマーチの初勝利

1970年4月19日、スペイン・ハラマ・サーキット。F1世界選手権第2戦、1970年スペイングランプリが開催された。このレースは、ジャッキー・スチュワートのマーチによる劇的な初優勝と、数々の運営上の混乱によって記憶されることとなる波乱のレースであった。

レース前：6週間のブランクと新車の投入

前戦南アフリカグランプリから6週間のインターバルを経て、各チームはハラマに集結した。多くのイギリスチームは、その間にブランズハッチで開催された非選手権レース「レース・オブ・チャンピオンズ」に参加しており、このレースでもスチュワートがマーチ701で勝利を収めていた。

今大会では、ロータスが革新的な楔形ボディの新車タイプ72を投入。ヨッヘン・リントとジョン・マイルズが新車で参戦し、地元スペイン出身のアレックス・ソラー＝ロイグがタイプ49Cでスポット参戦した。また、マクラーレンはアンドレア・デ・アダミッチにアルファロメオV8エンジンを搭載したM7Dを用意した。BRMはヤードレー化粧品をスポンサーに迎え、チーム名とマシンのカラーリングを一新した。

予選：混乱の始まり

予選では、まず主催者による決勝進出台数の制限（16台、うち10台は自動的に決勝進出）が物議を醸す。ウィリアムズのフランク・ウィリアムズ代表は、この決定を非民主的で恣意的だと批判した。例えば、予選中にクラッシュしたグラハム・ヒルは、このルールのおかげで決勝進出が確定したのである。このルールがなければ、決勝進出が危うかっただろう。

さらに、予選中は決勝進出台数が確定せず、下位に終わったドライバーは決勝に出場できるか分からなかった。一部の時間帯は公式記録が取られていないという事態も発生した。ウォームアップ中にクラッシュしたピアス・カレッジ（ウィリアムズ/デ・トマソ）はマシンを破損し、決勝を断念した。

決勝進出台数は、日曜の朝になってようやく17台（カレッジの欠場により事実上16台）に決定。デ・アダミッチ、マイルズ、ソラー＝ロイグ、ジョー・シフェール、ジョージ・イートンは予選落ちとなった。しかし、主催者は地元出身のソラー＝ロイグの出場を望み、各チームに嘆願。イートンを除く4台をグリッドにつけようとした。しかし、国際スポーツ委員会（CSI）はこれを認めず、国家憲兵の協力を得て4台をグリッドから排除した。この混乱により、グリッド順位と予選タイムには大きなずれが生じた。

決勝：炎上事故とマーチの初優勝

スタート直後、ジャッキー・オリバーのBRMがコントロールを失い、ジャッキー・イクスのフェラーリに衝突。両車は炎上し、イクスは軽度の火傷を負った。消火活動中にレースは続行され、スチュワートがトップを譲ることなく優勝。マーチにF1初優勝をもたらした。これはプライベートチームによるF1世界選手権レースの最後の優勝となった。

2位争いは、スタートでスチュワートに続いていたデニス・ハルムがイグニッショントラブルでリタイアしたため、ジャック・ブラバムが浮上。しかし、ベルトワーズに抜かれた後、ベルトワーズがエンジントラブルでリタイアしたため、再び2位に返り咲いた。その後、ブラバムもエンジントラブルでリタイアし、ブルース・マクラーレンが2位、マリオ・アンドレッティが3位となった。マクラーレンは最後の表彰台、アンドレッティは初の表彰台を獲得した。グラハム・ヒルは4位でフィニッシュし、通算獲得ポイントでファン・マヌエル・ファンジオの記録を更新した。

このレースは、スチュワートの素晴らしいドライビングと、マーチの潜在能力の高さを示した一方、運営上の混乱と事故が後を引く波乱のレースとしてF1の歴史に刻まれた。

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