1970年ベルギーグランプリ

1970年ベルギーグランプリ：マクラーレンの悲劇とロドリゲスの栄光

1970年6月7日、ベルギーのスパ・フランコルシャンサーキット。1970年のF1世界選手権第4戦、ベルギーグランプリが開催されました。このレースは、数々のドラマと悲劇、そして感動的な勝利が織りなされた、F1史に刻まれた重要な一戦となりました。

マクラーレンを襲った悲劇

このレースを前に、マクラーレンチームは想像を絶する悲劇に見舞われます。まず、モナコグランプリ後、エースドライバーのデニス・ハルムがインディ500の練習走行中に大炎上事故を起こし、重傷を負いました。そして、レース開催直前の6月2日には、チームオーナーであるブルース・マクラーレンがテスト走行中に事故死するという衝撃的な出来事が起こります。このため、マクラーレンチームはベルギーグランプリを欠場せざるを得ませんでした。

さらに、前戦モナコグランプリを最後に、ジョニー・セルボ＝ギャバンが引退を表明。ティレルチームはジャッキー・スチュワート一人での参戦となりました。

スパ・フランコルシャン：危険なコースの改修

スパ・フランコルシャンは、その危険性から前年、ドライバーズによるボイコットを受けていました。しかし、安全性向上のため、コースにはバリアが設置され、マルメディセクションにシケインが追加されるなど、改修工事が行われました。それでも、14.1kmというコースの長さと、高速コーナーの多さは、依然としてドライバーにとって大きな脅威であり続けました。このレースは、この全長14.1kmのレイアウトで行われた最後のF1グランプリとなりました。

ロドリゲスの優勝とBRMの復活

予選では、ジャッキー・スチュワートがポールポジションを獲得。ヨッヘン・リント、クリス・エイモンがフロントローに並びました。決勝レースは、激しいトップ争いが展開されました。スタート直後からトップを争ったのはリント、エイモン、スチュワートでしたが、ペドロ・ロドリゲスが徐々に順位を上げ、5周目にはトップに躍り出ます。その後、ロドリゲスはエイモンを引き離し、独走態勢を築き、見事優勝を飾りました。

この勝利は、ロドリゲスにとって1967年南アフリカグランプリ以来3年ぶりのF1通算2勝目であり、BRMチームにとっても1966年モナコグランプリ以来4年ぶりの勝利となりました。BRMチームは、長らく低迷期が続いていましたが、ロドリゲスの優勝によって、その復活を強烈に印象づけることになります。

その他の出来事

レース終盤では、ジャック・ブラバムがペダルに油っぽいぼろきれが絡まるトラブルに見舞われたり、ジャン＝ピエール・ベルトワーズが3位、イグナツィオ・ギュンティが4位に入賞するなど、様々なドラマが展開されました。また、このレースはダンロップタイヤにとってF1最後の勝利となりました。ロドリゲスの平均速度は241.308km/hに達し、2年前のブルース・マクラーレンの記録を更新する、F1史上最高速度記録を樹立しました。

スパ・フランコルシャンの未来

改修が行われたものの、スパ・フランコルシャンサーキットの危険性は依然として残っており、このレースを最後に、この14.1kmのレイアウトでのF1開催は終了しました。より安全なコースレイアウトに変更されるまで、F1がスパ・フランコルシャンに戻ってくるのは13年後の1983年まで待つことになります。

1970年ベルギーグランプリは、マクラーレンチームの悲劇、スパ・フランコルシャンの危険性、そしてロドリゲスの感動的な勝利という、多くの要素が複雑に絡み合った、F1史に残る名レースでした。

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