1971年オランダグランプリ

1971年オランダグランプリ：雨と危険が織りなすドラマ

1971年6月20日、オランダ・ザントフォールト・サーキット。F1世界選手権第4戦、オランダグランプリが開催された。しかし、このレースは、激しい雨とサーキットの安全性の問題という、2つの大きな要素によって、他のグランプリとは異なる特別な様相を呈することになる。

安全対策の未整備と天候不良

レース前、ベルギーGPがサーキットの安全対策不足によりキャンセルされた影響もあり、前戦モナコGPから1ヶ月という長いインターバルが空いた。この期間、多くのチームは非選手権レースに参加したが、一部ドライバーはル・マン24時間レースや他のレースへの出場で忙殺されていた。

ザントフォールト・サーキットは、当時のF1マシンにとって危険な要素が多く残る、安全対策が不十分なトラックだった。このレースは、このサーキットでの最後のF1レースとなり、翌年は開催を見送ることになる。安全基準の改善を施したのち、1973年にコースレイアウト変更の上、復活することになる。

激しい雨は、コースコンディションを著しく悪化させた。路面は非常に滑りやすく、ウエットコンディションに強いドライバーに大きなアドバンテージをもたらした。特に、ジャッキー・イクスとペドロ・ロドリゲスの2人は、この状況を最大限に利用することになる。

エントリーリストと予選

ロータスのエマーソン・フィッティパルディは、直前の交通事故により負傷したため欠場。代役としてデイヴ・チャールトンが起用された。さらに、新人ドライバーのデイヴ・ウォーカーは、革新的なプラット・アンド・ホイットニー製ガスタービンエンジンを搭載した四輪駆動車を駆って参戦、注目を集めた。地元出身のジィズ・ヴァン・レネップもスポット参戦するなど、エントリーリストには様々な顔ぶれが揃った。

予選では、天候の変動が大きな影響を与えた。北海沿岸特有の天候不順の中、金曜日は乾燥、土曜日は雨と、大きくコンディションが変化。ウォーカーは予選中にマシンをクラッシュさせてしまい、チャールトンの出場もキャンセルに追い込まれる事態となった。アンドレッティは試験中のタイヤトラブルによりクラッシュを経験し、マシンを交換せざるを得ない状況となった。

ポールポジションは、イクスがロドリゲスを僅差で抑えて獲得。スチュワートが3番手と、強力な12気筒勢がフロントローを占める結果となった。

決勝レース：雨とタイヤ戦略

レース当日も雨は降り続き、コースコンディションは悪化したままレースはスタート。アンドレッティは燃料ポンプの故障によりスタートに遅れ、その後リタイアした。

スタート直後、イクスはトップに立ち、ロドリゲス、スチュワート、エイモンが追いかける展開に。序盤でシフェールがスピン、エイモンとスチュワートもスピンを喫するなど、多くのドライバーが苦戦を強いられた。ウィセルはピットイン時にピットレーンを逆走したため失格となった。

序盤はロドリゲスがトップを走行するも、路面が乾き始めるとイクスの追い上げが始まる。激しい攻防の末、イクスはロドリゲスを抜き去り、トップに返り咲いた。最終的に、イクスはロドリゲスに8秒の差をつけ、見事優勝を飾った。3位にはレガツォーニが入った。一方、グッドイヤータイヤを履くチームは苦戦し、最高位はベルトワーズの9位にとどまった。

このレースは、イクスの卓越したドライビングテクニック、そしてウエットコンディションでのファイアストンタイヤの圧倒的な性能が際立ったレースとなった。同時に、ザントフォールト・サーキットの安全性の問題を改めて浮き彫りにしたレースでもあった。このレースを最後に、サーキットはF1カレンダーから姿を消した。そして、安全基準の強化を経て、1973年にレイアウト変更の上で再びF1レースが開催されることとなる。

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