1971年オーストリアグランプリ

1971年オーストリアグランプリ：シフェールの栄光とスチュワートの戴冠

1971年8月15日、オーストリアのエステルライヒリンクにおいて、F1世界選手権第8戦、1971年オーストリアグランプリが開催されました。このレースは、ジョー・シフェール、ジャッキー・スチュワート、そしてF1界の未来を担う若手ドライバーたちの活躍が際立った、記憶に残る一戦となりました。

熾烈なチャンピオン争い

レース開始時点でのドライバーズチャンピオンシップでは、ジャッキー・スチュワートが圧倒的なリードを築いていました。前7戦で5勝を収め、2位のイクスに32点、3位のピーターソンに34点もの大差をつけていました。スチュワートのチャンピオン戴冠は、もはや時間の問題と思われていました。しかし、数学的な可能性としては、イクスとピーターソンに逆転の望みは残されていました。

そのため、このオーストリアGPの結果は、チャンピオン争いの行方を大きく左右する重要なレースとなりました。スチュワートがリタイアし、イクスとピーターソンが上位入賞を果たせば、チャンピオン争いは大逆転の可能性を秘めていました。

エントリーリストと注目ドライバー

このレースでは、いくつかの注目すべき出来事がありました。まず、マトラは新型エンジンの開発に集中するため、レースを欠場しました。また、マクラーレンはピーター・ゲシンを解雇し、ジャッキー・オリバーを起用しました。一方、ゲシンはBRMに移籍し、ジョー・シフェールと共にチームに加わりました。

そして何よりも注目を集めたのが、将来F1を席巻するドライバー、ニキ・ラウダのF1デビュー戦でした。ラウダはマーチから参戦し、アルファロメオ製のギアボックスを備えた、フォード・コスワースDFVエンジンを搭載したマシンを駆りました。さらに地元オーストリア出身の新人、ヘルムート・マルコもBRMから参戦しました。

予選と決勝レース

予選では、BRMのジョー・シフェールが、1968年メキシコGP以来となるポールポジションを獲得しました。ジャッキー・スチュワートをわずかに上回る好タイムを記録し、BRMチームにとって久しぶりの快挙となりました。

決勝レースは、晴天の中、大勢の観客が見守る中行われました。ポールポジションからスタートしたシフェールは、レース序盤からリードを奪い、その後もその優位性を維持しました。しかし、レース中盤、ジャッキー・スチュワートはマシントラブルによりリタイアを余儀なくされます。一方、シフェールは終盤、左リアタイヤのパンクに苦しみながらも、見事優勝を果たしました。

2位にはエマーソン・フィッティパルディ、3位にはティム・シェンケンが入りました。シェンケンにとって初の表彰台獲得となりました。また、このレースでは、ジャッキー・イクスも機械的なトラブルによりリタイアしました。その結果、スチュワートは残りのレースにかかわらず、2度目のドライバーズチャンピオンの座を確実なものとしました。

シフェールのグランドスラムと歴史的記録

ジョー・シフェールの優勝は、ポールポジション、ファステストラップ、そしてレース全周回をリードするというグランドスラムを達成したものでした。さらに、この勝利はシフェールにとって最後のF1優勝となりました。

このレースは、シフェールの輝かしい功績、スチュワートのチャンピオン戴冠、そしてラウダやマルコといった若手ドライバーたちのF1デビューという、様々な歴史的瞬間が凝縮されたレースとして記憶されています。また、このレースはニキ・ラウダとヘルムート・マルコにとっても、F1キャリアの始まりを告げる記念すべきレースとなりました。

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