1971年カナダグランプリ

1971年カナダグランプリ：濃霧とドラマが彩ったモスポート・パークの決戦

1971年9月19日、カナダ・モスポート・パーク。F1世界選手権第10戦、カナダグランプリの舞台は、すでにジャッキー・スチュワートとティレルチームの2冠が決定しているものの、ドライバーズ、コンストラクターズ選手権の2位争いが白熱する状況下で開催されました。

ドライバーズランキングでは、ロニー・ピーターソンがトップを走り、ジャッキー・イクス、フランソワ・セベール、エマーソン・フィッティパルディ、ジョー・シフェールが彼を追いかける展開。コンストラクターズ選手権でも、フェラーリが首位に立つものの、BRMとマーチが猛追していました。

このレースには、いくつかの注目すべき出来事が起きました。マトラはジャン＝ピエール・ベルトワーズの復帰により2台体制に。フェラーリは3台の312B2を投入するものの、全車完走を目標とするなど、苦戦が予想されました。ロータスはガスタービンエンジンを諦め、新しい72Dに開発の重点を移していました。マクラーレンはデニス・ハルムが復帰し、2台目のマシンはペンスキー・レーシングに貸し出され、F1デビュー戦を迎えるマーク・ダナヒューがドライブしました。ダナヒューのマシンは、ペンスキーのスポンサーであるスノコのカラーリングをまとっていました。また、マーチはアンドレア・デ・アダミッチに代わってマイク・ボイトラーを起用、ナンニ・ギャリはフォード・コスワースエンジン搭載の711を使用しました。BRMは地元出身のジョージ・イートンがスポット参戦し、5台体制で臨みました。さらに、スキップ・バーバー、ピート・ラブリー、クリス・クラフトといった北米ラウンドのみのスポット参戦ドライバーもエントリーしました。

予選では、金曜日の雨の影響で走行時間が限られる中、スチュワートが今シーズン5度目となるポールポジションを獲得。セベールが2番手、フィッティパルディ、クリス・エイモンが続く展開となりました。F1デビューのダナヒューは8番手と好位置を確保。一方、フェラーリ勢はマシンのバランスに苦しみ、低迷。クラフトとペスカロロは、それぞれエンジントラブルと予選中のクラッシュにより決勝を欠場することになりました。

決勝レースは、前座レースのアクシデントにより遅れてスタート。開始前に雨が降り出し、コースは水浸し状態となりました。全車雨用タイヤを装着してレースはスタート。ガンレイはウォームアップでクラッシュし、出走できなくなります。スタート直後、スチュワートとピーターソンがトップ争いを展開。ベルトワーズ、ダナヒュー、フィッティパルディ、セベールが続く展開。シフェールはコースアウトして順位を落としました。その後、ヒルとレガツォーニがクラッシュによりリタイア。スチュワートは首位をキープするも、ピーターソンに一時的に逆転されますが、その後スチュワートが再びトップに立ちます。ピーターソンはイートンとの接触によりマシンを損傷。スチュワートは独走状態に入りました。しかし、レース終盤には霧が濃くなり視界が悪化。64周目、視界不良のため赤旗が提示され、レースは中断、スチュワートの優勝が決まりました。これはF1世界選手権で初めて赤旗によりレースが打ち切られた事例となりました。

スチュワートは、ピーターソンに大差をつけての勝利。ピーターソンは、一時トップに立つなど健闘を見せ、ドライバーズランキング2位を確定させました。そして、ダナヒューはF1デビュー戦で3位表彰台を獲得するという快挙を成し遂げました。平均速度は131.883km/h、ファステストラップはデニス・ハルムの1分43秒5でした。このレースは、天候に左右されたドラマチックな展開と、若手ドライバーの活躍が光る、記憶に残る一戦となりました。

このレースでの主な記録として、ダナヒューの初表彰台、スチュワートの30回目の表彰台、ウィセルの最終入賞、イートンの最終出走などが挙げられます。また、ティレルチームの10回目の表彰台、フォード・コスワースエンジンの40勝目も達成されました。

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