1972年の昼間火球

1972年昼間火球：北米上空を駆け抜けた謎の天体

1972年8月10日、アメリカ合衆国とカナダ上空で、人々を驚嘆させた出来事がありました。それは、昼間にも関わらず明るく輝く火球の出現です。この火球、正式には「US19720810」と呼ばれ、大気圏に突入した小天体の痕跡として、科学的な興味を集めてきました。

驚異的な目撃と記録

協定世界時20時29分（アメリカ中部標準時14時29分）、ユタ州からアルバータ州上空にかけて、この火球は57km上空を約100秒間飛行しました。その様子は、多くの目撃者によって報告され、ワイオミング州グランドティトン国立公園を訪れていた観光客が8mmカメラで撮影した映像も残されています。昼間ということもあり、その明るさと長時間にわたる出現は、多くの人の記憶に刻まれたことでしょう。

小天体の正体と軌道

この火球を引き起こした小天体の正体は、いまだ完全には解明されていません。初期の分析では、石質隕石であれば直径約3メートル、彗星起源の氷天体であれば直径約14メートル（重量約1500トン）と推定されました。しかし、後の研究では、直径2～10メートルというより小さなサイズという説も提唱されています。

その速度は秒速約15キロメートルにも及びましたが、大気圏通過中に秒速800メートルほど減速し、最終的には宇宙空間に飛び去っていきました。大気圏突入時の角度が小さかったため、大気との摩擦による減速が大きく、爆発せずに通過することができたと考えられています。もし進入角度が大きければ、大気中で爆発し、数キロトン規模のエネルギーを放出していた可能性があります。

科学的調査の意義

火球は、その出現のまれさと短時間性から、科学的なデータを得ることが非常に困難です。そのため、US19720810のような、詳細な観測記録と分析データが残された事例は、非常に貴重です。この火球の研究を通じて、小天体の組成、大気圏突入時の挙動、軌道変化などの解明が進み、地球近傍天体の理解を深める上で重要な貢献を果たしています。

比較：他の科学的に調査された火球

US19720810以外にも、科学的に調査された火球の事例は存在します。

1990年10月13日: チェコスロバキア上空で、質量40kgの隕石が秒速41.5kmで観測されました。
2006年3月29日: 日本上空で、秒速18.8kmで飛行する火球が観測されました。
* 2007年8月7日: European Fireball Networkが観測した火球「EN070807」

これらの事例と比較することで、US19720810の特徴がより明確になり、地球近傍天体の多様性や、大気圏突入時の挙動に関する理解が深まります。

まとめ

1972年昼間火球は、その規模、観測記録、そして後の科学的分析を通して、地球近傍天体研究に大きな足跡を残しました。これからも、このような貴重なデータの蓄積と分析を通じて、地球への潜在的脅威から身を守る知恵を培っていく必要があるでしょう。

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