1972年アメリカグランプリ

1972年アメリカグランプリ：スチュワートの圧勝と新星の登場

1972年F1世界選手権最終戦、アメリカグランプリは、10月8日、ワトキンズ・グレン・グランプリレースコースにて開催されました。既にワールドチャンピオンがエマーソン・フィッティパルディに決定していたものの、このレースは、数々のドラマと記録を生み出す、記憶に残る一戦となりました。

予選：スチュワートのポールポジションと波乱の展開

雨と風に見舞われた予選では、ジャッキー・スチュワートが1分40秒481のタイムでポールポジションを獲得。フロントローにはマクラーレン勢が並びました。F1デビュー戦を迎えたジョディー・シェクターは8番手グリッドからスタートを切ります。

タイヤ戦略も大きな話題となりました。グッドイヤータイヤ勢はファイアストン勢に対し圧倒的なアドバンテージを築いていましたが、ファイアストンはヨーロッパでのレーシング部門を閉鎖しようとしており、各チームは古いタイヤを使用せざるを得ませんでした。しかし、レースウィーク中のタイヤ供給に関する各チームからの要望を受け、ファイアストンは翌年も参戦を継続することを決定しました。

予選では、いくつかのアクシデントも発生しました。ロニー・ピーターソンはスリックタイヤで走行中にクラッシュするも、メカニックの懸命な修理により決勝への参加が叶いました。サーティースチームは、マシントラブルにより決勝出走を断念するドライバーも出ました。

決勝：スチュワートのグランドスラムと様々な出来事

決勝レースは、天候に翻弄される展開となりました。スタート直後は晴天でしたが、すぐに雨が降り始めました。スチュワートは好スタートを切り、その後も独走状態を維持します。一方、上位争いは激しく、マシントラブルやアクシデントが続出しました。フィッティパルディはタイヤパンクとサスペンションのトラブルでリタイア。アンドレッティは1コーナーで他のマシンと接触、ロイテマンはノーズを破損するなど、上位陣にもアクシデントが起きました。

ピーターソンは予選でのクラッシュを乗り越え、素晴らしい走りで順位を上げていきます。シェクターはスピンを喫するも、完走を果たしF1デビュー戦を飾りました。また、レース終盤には突然の雨でコースコンディションが変化し、ドライバーたちはスリップに苦戦しました。

最終的に、スチュワートは圧巻の走りで優勝、グランドスラム（ポールポジション、ファステストラップ、全周回トップ、優勝）を達成しました。セベールが2位、ハルムが3位で続き、ティレルは1-2フィニッシュを飾りました。

レース結果とその後

スチュワートの平均速度は189.079km/h。ファステストラップはスチュワートが記録した1分41秒644でした。このレースは、スチュワートにとって4度目のグランドスラム、シェクターとデパイユにとっての初完走、そしてウォーカー、ウィセル、バーバー、ポージー、サーティースにとっての最終レースとなりました。

このレースから2週間後には、非選手権レースのワールド・チャンピオンシップ・ヴィクトリーレースが開催されました。様々なドラマと記録を残した1972年アメリカグランプリは、F1の歴史に大きな1ページを刻みました。 このレースの結果、スチュワートとティレルはドライバーズ、コンストラクターズ選手権で2位を獲得しました。 また、このレースを最後にマトラはF1から撤退しました。 BRMは、新型マシンの開発に苦戦し、チームの低迷が顕著になっていきました。 一方、マクラーレンは安定した成績を残しました。

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