1972年スペイングランプリ

1972年スペイングランプリ：F1史に残る兄弟同時出走と波乱のレース展開

1972年5月1日、スペインのハラマ・サーキットにおいて、F1世界選手権第3戦、1972年スペイングランプリが開催されました。このレースは、エマーソン・フィッティパルディの優勝、そしてF1史上初めて兄弟が同時にレースに出走したことで知られています。

レース前：非選手権レースとマシンの改良

前戦の南アフリカグランプリから約2ヶ月間のインターバル期間中には、3つの非選手権レースが開催されました。エマーソン・フィッティパルディは、レース・オブ・チャンピオンズとBRDCインターナショナル・トロフィーの両方を制覇し、好調を維持していました。一方、フェラーリは新車312B2の改良に注力し、リアウィングの大型化やエンジンオイル冷却装置の移設など、パフォーマンス向上のための改良を重ねていました。また、ブラバムのカルロス・ロイテマンは、F2レースでのクラッシュにより負傷し、スペイングランプリを欠場することになりました。

エントリー：新車投入と兄弟ドライバー

ロイテマンの代役として、ブラバムからはウィルソン・フィッティパルディがF1デビューを果たしました。これにより、エマーソンとウィルソン・フィッティパルディ兄弟が同時にF1レースに出走するという歴史的な瞬間が訪れたのです。このグランプリでは、ブラバム以外にも複数のチームが新車を投入しました。マーチは721X、BRMはP180といった新マシンがグリッドに並び、技術開発競争の激しさを象徴していました。

予選：フェラーリの優位と混戦模様

予選では、フェラーリの改良が実を結び、ジャッキー・イクスがポールポジションを獲得しました。マクラーレンのデニス・ハルム、ロータスのエマーソン・フィッティパルディがこれに続き、トップ3は強力な布陣となりました。予選では25台までしかグリッドが確保されず、多くのドライバーがその座を争いました。

決勝：天候が左右した激戦

決勝レース当日、朝には雨が降り、レース開始直前も霧雨が降る不安定な天候となりました。しかし、レインタイヤを装着する必要はなく、全車がスリックタイヤでスタートしました。スタート直後はハルムがトップに立ちますが、その後ギアボックストラブルに見舞われ、順位を下げていきます。

エマーソン・フィッティパルディはスタート直後に燃料漏れと消火器の誤作動というトラブルに見舞われながらも、徐々に順位を上げていきます。40周目頃から雨脚が強まり、路面状況は刻々と変化していきました。しかし、終盤には雨が止み、路面が乾いていくという、天候が大きく影響するレース展開となりました。

激しいバトルの中で、スチュワートがスピンでリタイアするなど、上位陣の順位は目まぐるしく入れ替わりました。そして、エマーソン・フィッティパルディが見事な走りで優勝を掴み取りました。この優勝は、彼自身にとっても、前年未勝利に終わったロータスチームにとっても、大きな意味を持つものでした。

結果と記録

このレースでは、エマーソン・フィッティパルディが優勝、ジャッキー・イクスが2位、クレイ・レガツォーニが3位という結果となりました。ウィルソン・フィッティパルディはF1初出走を果たし、アンドレア・デ・アダミッチとカルロス・パーチェがそれぞれ初入賞を飾りました。また、アレックス・ソラー＝ロイグはこのレースを最後にF1から引退しました。

エマーソン・フィッティパルディの平均速度は148.614km/hを記録し、ファステストラップはジャッキー・イクスが記録しました。天候の変化やマシントラブル、ドライバーのミスなど、様々な要素が絡み合った、F1史に刻まれた激動のレースとなりました。

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