1974年の鉄道

1974年の鉄道界：変革と新陳代謝の一年

1974年（昭和49年）は、日本の鉄道史において重要な転換期の一つと言える年でした。全国各地で路線の廃止が進む一方で、新たな鉄道路線が開業・延伸され、既存路線の改良も活発に行われました。これは、モータリゼーションの進展や都市構造の変化など、社会状況の大きな変化が鉄道網に影響を与えた結果と言えます。

多くの路線がその役目を終える

この年、特に大きな出来事として挙げられるのが、長年にわたり名古屋市民の足として活躍した名古屋市電の全廃です。2月16日と3月31日の二度にわたる大規模な路線廃止により、下江川線、八熊東線、熱田線、大江線、東郊線、藤成線、循環北線、循環東線、八事線、笠寺線、笠寺延長線、東臨港線など、残存していたすべての系統が姿を消しました。

名古屋市電以外にも、地方私鉄や都市内の路面電車で廃止が相次ぎました。2月には京都府の北丹鉄道（福知山～河守間）が、3月には阪神電気鉄道の国道線（上甲子園～西灘間）が運行を終了。4月には高知県の土佐電気鉄道安芸線（後免～安芸間）と京都市電の烏丸線（烏丸車庫前～七条烏丸間）が廃止されました。また、夕張鉄道の野幌～栗山間では旅客営業が休止され、路線は北海道炭礦汽船に譲渡されました。秋には東濃鉄道の駄知線（土岐市～東駄知間）、山形交通の三山線（羽前高松～間沢間）と高畠線（糠ノ目～高畠間）も廃止され、地方交通の厳しい現状が浮き彫りになりました。

新しい鉄道ネットワークの誕生

廃止が進む一方で、新たな鉄道路線も開業しています。国鉄では、3月1日に四国の宇和島線が予土線と改称されるとともに、若井～江川崎間が延伸開業しました。そして、この年の夏の最大のニュースは、7月20日の国鉄湖西線開業でしょう。山科駅と近江塩津駅を結ぶ74.1kmのこの新線は、琵琶湖西岸を経由する新しいルートとして、京阪神と北陸間の時間短縮に大きく貢献しました。開業と同時に、西大津（現・大津京）、堅田、近江今津など多数の新駅が設置されています。

都市圏では、地下鉄や郊外路線の整備が進みました。3月30日には名古屋市営地下鉄名城線（4号線）が新瑞橋～金山間を延伸開業。10月30日には帝都高速度交通営団（現・東京メトロ）有楽町線が池袋～銀座一丁目間で開業し、都心部の地下鉄網が拡大しました。郊外私鉄では、6月1日に小田急電鉄多摩線が新百合ヶ丘～小田急永山間で、10月18日には京王電鉄相模原線が京王よみうりランド～京王多摩センター間でそれぞれ延伸開業し、多摩ニュータウンの開発と歩調を合わせる形で鉄道アクセスが整備されました。名古屋鉄道でも知多新線の一部（富貴～上野間間）が6月30日に開業しています。既存路線の利便性向上のため、東武鉄道は伊勢崎線に新越谷駅、東上本線に朝霞台駅を新設しました。

国際的には、8月15日に韓国で首都圏電鉄1号線が開業し、ソウル都市圏の鉄道網の基礎が築かれました。これに伴い、既存の国鉄関連区間の電化や複線・複々線化も実施されています。

既存路線の改良も進められました。国鉄では、3月に日豊本線の幸崎～南宮崎間が電化され、輸送力の強化が図られました。羽越本線や函館本線の一部区間では複線化も進められています。

新型車両の登場と形式の消滅

この年は、多くの新型車両が鉄道界に登場しました。国鉄では、直流用電気機関車のED62形、新幹線電気軌道総合試験車である922形（後に「ドクターイエロー」と呼ばれる検測車の礎）、そして北海道・九州向けに初めて冷房を標準装備したキハ66系気動車などが製造されました。貨物輸送を支えるため、様々な用途の新型貨車も多数登場しています。帝都高速度交通営団では、有楽町線開業に合わせた高性能車両、7000系電車が登場。主要私鉄でも、近畿日本鉄道の6200系、南海電気鉄道の6200系、阪神電気鉄道の3801・3901形など、新しい通勤型車両が導入されました。

一方で、時代の流れとともに役目を終えた車両も多くありました。国鉄では、かつての優等寝台客車であるマロネ41形や、多くの貨車形式が廃形式となりました。また、廃止された土佐電気鉄道安芸線で使用されていた電車や機関車なども、形式として消滅しました。

安全運行への課題

残念ながら、鉄道運行における事故も発生しています。6月7日には羽越本線で貨物列車が脱線転覆する事故が発生。さらに7月10日には、同じく羽越本線で発生した土砂崩れにより貨物列車が脱線し、乗務員が殉職するという痛ましい事故が発生しました。これらの事故は、鉄道の安全運行に対する課題を改めて浮き彫りにしました。

受賞車両

鉄道車両の分野では、優れたデザインや技術が評価されました。鉄道友の会が選定するブルーリボン賞には、京成電鉄の空港特急「スカイライナー」用として開発された初代AE車が選ばれ、その革新的なデザインと快適性が評価されました。ローレル賞は、西日本鉄道の2000形電車が受賞しています。

1974年は、鉄道が社会環境の変化に適応しようとする中で、路線の整理とネットワークの拡充、車両の近代化などが同時に進められた、まさに変革の年でした。光と影の両面を持つ出来事が数多く発生し、日本の鉄道史において特筆すべき一年として位置づけられます。

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