1977年のラジオ (日本)

1977年の日本のラジオ

1977年は、日本のラジオ放送において技術的な進歩、放送局間の活発な動き、そして多くの新しい番組が誕生した一年でした。この年は、将来につながる技術の萌芽が見られたと同時に、放送局同士の競争が顕在化する出来事も起こっています。

技術の進化とFM放送の広がり

この年のラジオ界における重要な技術的ニュースとしては、NHK-FMが8月6日に東京局の『FMリクエストアワー』において、局として初めてPCMデジタル録音を用いた番組を放送したことが挙げられます。これは、後のデジタル音声放送の時代を予感させる画期的な試みでした。

また、NHK-FMではかねてより進められていた全国的なステレオ放送網の整備がこの年、大きく前進しました。これまでローカル番組をモノラルで放送していた地方の放送局（金沢、松江、鳥取、高知、熊本、秋田、山形、盛岡、福島、青森、函館、旭川、帯広、釧路、北見、室蘭、京都、神戸、和歌山、奈良、大津、津、岐阜、沖縄など）において、ローカル番組の送出設備がステレオ対応となり、制作される番組も順次ステレオ化されました。同年11月11日には、NHK-FMが全国全ての放送局でステレオ放送の整備を完了したと発表し、より高音質なラジオ体験が全国へと広がりました。

放送権を巡る対立

ラジオ界の大きな波紋を呼んだ出来事として、11月29日にラジオ関東（現在の名称はアール・エフ・ラジオ日本）がプロ野球、特に読売ジャイアンツの主催試合におけるラジオ独占放送権を獲得したと発表したことが挙げられます。これは、これまで複数局で放送されてきたプロ野球中継の勢力図を大きく変える可能性を持つものでした。

この動きに対し、TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送といった他の主要なラジオ局は強く反発。独占は公正な競争を阻害するとして公正取引委員会への提訴に踏み切るなど、法的な手段も視野に入れた対抗措置を取りました。さらに、巨人以外のセ・リーグ各球団に対しても、ラジオ関東への放送権付与を控えるよう働きかけるなど、放送局間の緊張が高まる事態となりました。

番組の動きと節目

番組の面では、長寿番組が大きな節目を迎えました。エフエム東京で放送されている人気番組『ジェット・ストリーム』は、5月20日に放送2000回を達成し、その歴史を刻みました。

また、記念番組や特別企画も多数放送されました。ニッポン放送では、開局記念として5月9日から11日にかけて『ヒゲ武・くり万60時間マラソンDJ』という長時間特別番組を放送し、リスナーの注目を集めました。MBSラジオでも5月15日に『新しい出会い 1180kHzこんにちわ』が放送されています。さらに、10月30日には民放ラジオ53社が共同で企画し、そのうち48社が同時に放送するという大規模な特別番組『日本列島・北から南から〜日本語さん全員集合!』が実現。全国のリスナーを結ぶ企画として話題となりました。

この一年で多くの新番組が始まり、各局のラインナップが刷新されました。朝の時間帯には、朝日放送の『おはようパーソナリティ道上洋三です』（3月28日開始）や、TBSラジオの『かつ江と悠里の朝風呂問答』（4月4日開始）、ニッポン放送の『八代英太のお早ようニッポン』（10月3日開始）など、現在まで続く、あるいは長年親しまれた番組が誕生しています。午後の時間帯には、中部日本放送の『星空ワイド 今夜もシャララ』（4月4日開始）、大阪放送の『お元気ですか 鏡宏一です』（4月4日開始）などがスタートしました。夜間帯では、ニッポン放送で『近田春夫のオールナイトニッポン』や『所ジョージのオールナイトニッポン』（いずれも開始日不明）、日本短波放送で『ヤロウどもメロウどもOh!』（開始日不明）といった、若者向けの深夜放送も登場し、その後のラジオ文化を形作る上での重要な役割を果たしました。

一方で、長年親しまれた番組が惜しまれつつ終了しました。朝日放送の『おはようパーソナリティ中村鋭一です』（3月25日終了）は、人気パーソナリティの降板に伴い番組に幕を下ろしました。エフエム東京の『サウンド・イン・ナウ』（9月24日終了）など、様々なジャンルの番組が改編期に姿を消しています。

その他の動向

番組や技術の動き以外では、1月15日に極東放送がFEBC（Far East Broadcasting Company）による英語放送を終了、廃止したことも特筆されます。これは、戦後の一時期から続いていた特定の形態の国際放送が幕を下ろす出来事でした。

1977年は、このように技術の着実な進歩と、放送局間の競争、そして数多くの番組の誕生と終焉が交錯し、日本のラジオ界が多様化・成熟化していく過程を明確に示す一年であったと言えるでしょう。

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