1978年イタリアグランプリ

1978年イタリアグランプリ：悲劇とチャンピオンの影

1978年9月10日、イタリア・モンツァ・サーキット。第14戦イタリアグランプリは、F1世界選手権の歴史に暗い影を落とす出来事と共に幕を開けました。

圧倒的優位のアンドレッティ、そしてピーターソンの挑戦

オランダGP終了時点で、マリオ・アンドレッティ（ロータス）はドライバーズランキング首位をほぼ確定していました。僅かに可能性を残していたのは、2位のロニー・ピーターソン（ロータス）のみでしたが、ロータスチームはアンドレッティを優先する戦略を取っており、アンドレッティのチャンピオン戴冠は時間の問題でした。

予選：ピーターソンの苦戦とヴィルヌーヴの好走

予選では、ピーターソンはマシントラブルに苦しみ、アンドレッティとは対照的に5位に終わりました。一方、ジル・ヴィルヌーヴ（フェラーリ）は2位、ジャン＝ピエール・ジャブイーユ（ルノー）は3位と好成績を残しました。

未曽有の多重事故

決勝レースは、スタート直後から悲劇に見舞われます。後方からのマシンがまだ加速しきらないうちにスタート信号が点灯し、集団が密集した状態となったホームストレートで、多重クラッシュが発生しました。この事故は、多くのマシンが絡む大規模なものとなり、ピーターソンは炎上するマシンから救出されましたが、重傷を負いました。ヴィットリオ・ブランビラもまた、重傷を負いました。

レース再開と結果

事故による赤旗中断の後、レースは再スタート。ヴィルヌーヴが一時トップに立ちましたが、最終的にアンドレッティが勝利しました。しかし、アンドレッティとヴィルヌーヴはフライングスタートのペナルティを受け、ニキ・ラウダとジョン・ワトソン（共にブラバム）がワンツーフィニッシュを果たしました。

ピーターソンの死と安全対策の改革

ピーターソンは、事故後一時的に容態が安定したものの、翌日に脂肪塞栓症のため死去しました。この悲劇的な出来事は、F1関係者に衝撃を与えました。

多重事故の原因は、スタートシグナルの操作ミスと判断され、この事故を教訓に「オフィシャルスターター制度」が導入されました。国際自動車連盟（FIA）安全委員がスタートシグナルを担当するようになり、スタッガード方式によるスタートグリッドの並び方の変更なども行われました。また、パトレーゼへの責任追及問題も発生しましたが、後にパトレーゼに非がないことが判明しました。

余波

このレースは、アンドレッティのチャンピオン決定という結果だけでなく、F1における安全対策の改革を促す契機となりました。ピーターソンの死は、モータースポーツ界全体に大きな衝撃を与え、安全意識の向上に貢献しました。ブランビラは回復し、翌年にはレースに復帰を果たしました。1978年のイタリアGPは、勝利と悲劇、そして大きな変化が交錯した、記憶に残る一戦となりました。

もう一度検索