1981年の国際連合事務総長の選出

1981年国連事務総長選出の背景と経過

1981年、国際連合事務総長の選出において、現職のクルト・ヴァルトハイムが前例のない3期目を目指して立候補しましたが、タンザニアのサリム・アハメド・サリムに僅差で敗れる結果となりました。この選挙では、各国の支持が入り乱れ、特に中国とアメリカの拒否権の行使が選挙結果に大きく影響しました。最終的にはサリムも拒否権を受け、再選を果たせず、選挙は長期にわたる膠着状態に陥りました。

事務総長選出のプロセスと候補者

国連事務総長は安全保障理事会の勧告を受け、総会で任命されます。このため、常任理事国は候補者に対して拒否権を行使できるため、大国の意向が直接的に結果に影響を与えます。1971年の選出では、中国が第三世界の代表を選ぼうとしヴァルトハイムに拒否権を行使したという前例がありました。

1981年、ヴァルトハイムは再選の支持を受けましたが、中国は新たに第三世界からの候補者を求め、サリムを支持していました。サリムは、非同盟運動やアフリカ統一機構から支援を受けており、海外での経験も豊富な外交官でしたが、アメリカからの反対を受け、他の国々からも支持を得られませんでした。

投票までの経過

投票は1981年10月27日から始まり、未曾有の16回の投票が行われました。最初の投票ではサリムが11票を得たものの、両者ともに拒否権が行使され、投票を進めることができませんでした。最終的な拒否権の行使の結果、この選挙は急速に膠着状態となり、安保理は両候補者に辞退を求める方向へと動きました。

外交官たちは、平和的な解決を求め、再度の候補者指名へと進めることを模索しました。安全保障理事会の持ち回り議長オララ・オトゥヌは、両候補者に辞退を求めるための事前投票の提案を行い、12月にヴァルトハイムが辞退表明しました。

その後、サリムも辞退し、新たに9人の候補者が浮上しました。投票の方法も変わり、オトゥヌ議長のもとで行われた事前投票により意欲的な候補者の絞り込みが行われました。

新たな事務総長の選出

最終的に、ペルー出身のハビエル・ペレス・デ・クエヤルが選出されることになります。彼は事前投票での支持を受け、正式に国連事務総長に任命されます。ペレス・デ・クエヤルの選出は、初のラテンアメリカ出身として国連事務総長の地位に就く画期的な瞬間となりました。

影響と教訓

1981年の選出は、その後の国連事務総長選出に多くの影響を与えました。まず、事務総長の任期についての非公式なルールとして、2期までという考え方が定着しました。また、地域グループ持ち回りの原則が強化され、次期事務総長には第三世界の候補者が期待されるようになりました。この選出は、国連における権力のバランスを変え、中国とアメリカの影響力を改めて浮き彫りにしました。

さらに、1986年にはペレス・デ・クエヤルが再選されましたが、彼は国連の財政懸念にも直面することになります。これを機に、さまざまな国際問題に対する国連の役割や各国の影響力の変化が続いていくことが期待されました。

1981年の選出を振り返ると、国連における決定過程や、各国の外交戦略における複雑さを深く理解する手助けとなります。

もう一度検索