1993年のドイツツーリングカー選手権

1993年ドイツツーリングカー選手権：アルファロメオの躍進とメルセデスの苦戦

1993年のドイツツーリングカー選手権(DTM)は、シリーズにとって大きな転換点となるシーズンでした。この年から、FIAのクラス1ツーリングカー規定が導入され、エンジンは2.5リッター6気筒に制限されました。一方、シャシーや空力デバイスに関しては、大幅な変更が許容されたため、各メーカーは性能向上にしのぎを削りました。

この技術規定変更により、シーズンは予想外の展開を見せます。最も大きな出来事は、アルファロメオの圧倒的な勝利でした。アルファロメオは、新たに開発された155 V6 TIを投入。V6エンジンと洗練された空力パッケージを組み合わせたこのマシンは、メルセデスの190E/C1を大きく凌駕する戦闘力を発揮しました。

対するメルセデスは、新型Cクラスの開発が間に合わず、前年までの190E 2.5-16エボリューションIIを改良して参戦。しかし、直列4気筒エンジンではV6エンジンを搭載したアルファロメオに対抗するには力不足でした。AMGとザクスピードから合計6台のマシンを投入しましたが、ドライバー、マニュファクチャラーの両タイトルを獲得することはできませんでした。メルセデス勢のラフなドライビングも批判を浴び、第6戦ノリスリンクでは、チームマネージャーがアルファロメオに対して公式に謝罪する事態となりました。

アルファロメオ陣営では、ニコラ・ラリーニがその圧倒的な速さを証明しました。ラリーニは開幕戦ゾルダー、第5戦ニュルブルクリンク、第6戦ノリスリンクで3連勝を飾るなど、シーズンを通して圧倒的な強さを発揮。10勝を挙げ、見事ドライバーズタイトルを獲得しました。チームメイトと共に、アルファロメオはコンストラクターズタイトルも獲得し、DTMに鮮烈なデビューを飾りました。

一方、BMWは新型M3のクラス1仕様マシンの開発を進めていましたが、ホモロゲーション問題によりDTMからのワークス撤退を決定。ワークスチームによる参戦はありませんでした。ただし、プライベーターチームであるリンダ―が、第6戦ノリスリンクからE36 M3を投入し、ワークス参戦を見据えた開発活動を行ったと推測されています。しかしながら、直列4気筒エンジンでは競争力を欠いており、目立った成績を残すには至りませんでした。

オペルは、クラス1仕様のカリブラの開発に集中するため1992年シーズンを欠場していましたが、1993年最終戦ホッケンハイムでDTMに復帰。ヨースト・レーシングが運営するチームから参戦を果たしました。

クラス2は、アルファロメオ155とオペル・アストラの計4台のみのエントリーとなり、事実上不成立に終わりました。また、1992年までDTMワークスチームが積極的に参戦していたスパ24時間レースやマカオグランプリへの参戦は、1993年には見られませんでした。ただし、プライベーターによる参戦は継続されており、マカオグランプリではBMW M3が優勝を飾るなど、その存在感を示しました。

さらに、1993年のインターTECレースへのDTMマシン参戦計画がありました。メルセデス、アルファロメオ、オペルと交渉が進み、JAFも参加を認めましたが、直前でメルセデスAMGが参加を取り消し、実現しませんでした。

1993年シーズンは、レギュレーション変更によって、アルファロメオの台頭とメルセデスの苦戦という、DTMの歴史において重要な1年となりました。技術開発の激しさ、メーカー間の競争の激しさを象徴するシーズンだったと言えるでしょう。

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