1993年カンボジア制憲議会総選挙

1993年カンボジア国民議会選挙

1993年5月23日から28日にかけて、カンボジアで行われた憲法制定議会議員の総選挙について解説します。

概要

1991年9月に四派（シアヌーク派、プノンペン政権派、ソン・サン派、ポル・ポト派）間で調印されたパリ和平協定に基づき、この選挙は実施されました。国際連合安全保障理事会決議745号に基づき設置された国連カンボジア暫定統治機構（UNTAC）が主導し、選挙の実施を監督しました。ポル・ポト派は選挙をボイコットし、武力妨害が懸念されましたが、UNTACの厳重な警戒の下で選挙は行われました。結果として、「独立・中立・平和・協力のカンボジアのための民族統一戦線」（フンシンペック）が第一党となり、カンボジア人民党（人民党）が第二党となりました。

選挙制度

選挙は、パリ和平協定の付属文書およびUNTAC選挙法に基づいて実施されました。以下に選挙制度の詳細をまとめます。

投票日: 1993年5月23日から28日
改選数: 120
選挙制度: 厳正拘束名簿式比例代表制
特記事項: ポル・ポト派統治下のパイリン州では選挙は実施されませんでした。
投票方法: 秘密投票、1票制
選挙権: 満18歳以上のカンボジア国民
被選挙権: 満21歳以上のカンボジア国民
有権者数: 4,764,430

選挙活動と党派の動き

選挙法では、政党を「公認する候補者を憲法制定議会に当選させることを目的とする組織」と規定していました。UNTACに登録した政党は20に及びました。以下に、議席を獲得した主要な政党を紹介します。

カンボジア人民党 (CPP): ベトナムの支援を受けたヘン・サムリン政権の勢力が主体でした。
フンシンペック: シアヌークの息子、ラナリットが党首を務める王党派です。
仏教自由民主党 (BLDP): ソン・サン元首相が結成した政党です。
モリナカ党: フンシンペックの分派です。

ポル・ポト派による選挙妨害

ポル・ポト派は選挙をボイコットし、UNTAC施設や要員への襲撃事件が多発しました。UNTAC要員11名（うち1名は日本の文民警察官、高田晴行警部補）が死亡し、選挙監視スタッフとして派遣された国連ボランティア（UNV）の中田厚仁も殺害されました。

選挙結果

6日間にわたる投票は、一部地域での襲撃事件があったものの、概ね平穏に行われました。投票率は89.04％に達し、国民の関心の高さを示しました。選挙戦はフンシンペックと人民党による事実上の一騎打ちとなり、フンシンペックが都市部を中心に支持を伸ばして第一党となりました。人民党は地方組織を利用して善戦しましたが、経済不振、汚職、反ベトナム感情などが影響し、第二党にとどまりました。

まとめ

1993年のカンボジア国民議会選挙は、和平プロセスにおける重要な一歩でした。UNTACの主導による選挙実施は、カンボジアの民主化を促進する上で大きな役割を果たしました。しかし、ポル・ポト派による妨害や国際連合ボランティアの犠牲など、多くの課題も残されました。この選挙の結果は、その後のカンボジアの政治に大きな影響を与えました。

参考文献

西平重喜編「［資料］最近の選挙結果」、『選挙研究』No9、1994
日本選挙学会年報『選挙研究』No9、1994年
総選挙成功したがポト派問題積み残し 1993年のカンボジア - アジア動向データベース

外部リンク

カンボジア総選挙 新政権誕生（1993年） - NHK放送史

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