1999年の鉄道

1999年（平成11年）の鉄道概況

1999年は、日本の鉄道史において様々な動きが見られた年です。新たな鉄道路線の誕生や既存路線の延伸、新型車両の投入、さらには悲しい事故や事件も発生するなど、多くの出来事が記録されています。

新たな鉄路の開通とネットワークの拡充

この年、複数の地域で新しい鉄道路線が開業しました。年明け早々の1月11日には、岡山県と広島県を結ぶ第三セクター鉄道、井原鉄道の井原線（総社～神辺間41.7km）が全線開業し、沿線に13の新しい駅が設置されました。3月には相模鉄道いずみ野線がいずみ中央駅から湘南台駅まで延伸（3.1km）し、横浜市南部の利便性が向上しました。また、横浜市営地下鉄1号線も戸塚駅から湘南台駅まで延伸（7.4km）し、広範囲からのアクセスを可能にしました。千葉都市モノレール1号線も千葉駅から県庁前駅まで延伸（1.7km）しています。

国外では、タイの首都バンコクで高架鉄道であるバンコク・スカイトレインが開業し、スクムウィット線とシーロム線の営業が開始されました。韓国の仁川広域市でも地下鉄1号線の一部区間が開業するなど、近隣アジア諸国でも鉄道ネットワークの整備が進みました。

主要プロジェクトの進展と路線の変化

長年にわたるプロジェクトであった山形新幹線の延伸が実現しました。12月4日には山形駅から新庄駅までの区間（61.5km）が延伸開業し、これに伴い奥羽本線の山形～新庄間は標準軌に改軌されました。工事期間中は一部区間が休止されていましたが、この延伸により東北地方の広域ネットワークが強化されました。

一方で、惜しまれつつ姿を消した路線もあります。4月5日には新潟交通の電車線（東関屋～月潟間21.6km）が廃止され、多くの駅と共にその歴史に幕を下ろしました。また、蒲原鉄道の一部区間（村松～五泉間4.2km）も10月4日に廃止されています。名古屋鉄道美濃町線の一部区間も形を変えつつ廃止されました。これらの廃止は、モータリゼーションの進展など社会状況の変化を反映したものでした。

新型車両の登場とサービスの向上

1999年は、多くの新型車両が営業運転を開始した年でもあります。特に注目されたのは、東海道・山陽新幹線の次世代車両である700系で、3月13日から「のぞみ」を中心とした運用が始まりました。JR東海では、後に同社の主力車両となる313系電車が登場し、様々な線区に投入されました。JR九州でも815系電車が営業運転を開始し、鹿児島本線などで活躍を始めました。私鉄では、東京急行電鉄の3000系（2代）、300系、南海電気鉄道の31000系などがデビューしています。

また、新たな観光列車や寝台特急も誕生しました。JR東日本ではC57 180が牽引する臨時快速「SLばんえつ物語号」が運行を開始し、蒸気機関車による旅の魅力が再認識されました。7月16日には上野駅と札幌駅を結ぶ豪華寝台特急「カシオペア」が運転を開始し、上質な旅を提供しました。

既存車両のワンマン運転化も多くの路線で進められました。近畿日本鉄道の御所線・道明寺線、上毛電気鉄道上毛線、JR九州の鹿児島本線・日豊本線、JR東海の御殿場線・高山本線・身延線などで順次開始されています。

安全への課題とその他の動き

安全運行に関わる事故や事件も発生しました。2月21日にはJR山手貨物線で保線作業員が列車に接触し、尊い命が失われました。6月27日には山陽新幹線の福岡トンネル内でコンクリート塊が走行中の「ひかり」に落下する事故が発生し、新幹線の安全性に対する懸念が浮上しました。さらに、9月29日には下関駅構内で無差別殺傷事件が発生するという痛ましい事件も起こっています。

文化面では、4月18日に群馬県に碓氷峠鉄道文化むらが開園し、鉄道ファンのみならず多くの人々が訪れる施設となりました。車両に対する賞としては、優れたデザインや機能を持つ車両に贈られるブルーリボン賞をJR西日本・JR東海の285系電車（サンライズエクスプレス）が、ローレル賞をスカイレールサービス200形が受賞しています。

1999年は、新線の開業や新幹線延伸によるネットワークの拡大、新型車両の導入といった発展の一方で、既存路線の廃止や安全に関わる問題にも直面した、鉄道史における変化の多い一年であったと言えるでしょう。

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