2002年フランスグランプリ

2002年フランスグランプリ：シューマッハ、伝説への道を歩む

2002年のF1世界選手権第11戦、フランスグランプリは、マニクール・サーキットで7月21日に開催されました。このレースは、ミハエル・シューマッハにとって、5度目のワールドチャンピオン獲得を決定づける大きな転換点となりました。彼はこの勝利によって、F1レジェンド、ファン・マヌエル・ファンジオと並ぶ偉業を達成したのです。

期待と不安が交錯したレースウイーク

レース前、シューマッハはすでにチャンピオンシップを制する可能性の高い位置にいました。ライバルであるルーベンス・バリチェロとファン・パブロ・モントーヤが3位以下に終われば、シューマッハのチャンピオン戴冠が決まる状況でした。 このレースウィークは、シューマッハの戴冠だけでなく、他のチームにも大きな動きがありました。ルノーは来シーズンのドライバーラインナップを発表。トゥルーリの残留、ジェンソン・バトンの離脱、そしてフェルナンド・アロンソのF1復帰というニュースが飛び交いました。一方、資金難に苦しむアロウズは、レースへの参加が危ぶまれましたが、最終的にはサーキットに姿を現しました。さらに、ジョーダンチームのジャンカルロ・フィジケラは、大きなクラッシュによって予選とレースへの出場を断念せざるを得ませんでした。

予選：資金難とドライバー交代の波紋

予選では、資金繰りに苦しむアロウズが、戦略的に予選落ちを選択するという異例の事態が発生しました。ジョーダンはフィジケラの代役として、ニック・ハイドフェルドを起用しようと試みましたが、結局は佐藤琢磨の1台体制で決勝レースに臨むこととなりました。

決勝：ドラマチックな展開とチャンピオンシップ決定

決勝レースは、予想外の展開から始まりました。フォーメーションラップで3番グリッドにつけていたバリチェロが、ジャッキが上がったままの状態となり、スタート直後にリタイアを余儀なくされました。ポールポジションのモントーヤはレースをリードし、2位につけたシューマッハと、そしてライコネンとの激しいバトルを繰り広げました。レース中盤では、ザウバーのフェリペ・マッサが一時7位まで順位を上げるも、フライングスタートによるペナルティで順位を落としました。また、母国グランプリに出場したオリビエ・パニスは、佐藤琢磨と接触。両者ともリタイアするというアクシデントも発生しました。

ピットストップ戦略がレース展開を大きく変えました。モントーヤが先にピットインした後、シューマッハがピットインした際にピットレーンの白線を越えてしまったため、ドライブスルーペナルティを科されました。その後、モントーヤが後退する中、ライコネンがトップに立ち、2位にシューマッハ、3位に地元フランスを得意とするデビッド・クルサードが続きました。しかし、クルサードもシューマッハと同じ理由でペナルティを受け、順位を落としました。

ライコネンの初優勝が確実視される中、残り5周というところでトヨタのマクニッシュがエンジントラブルでオイルをコース上に撒き散らし、リタイアしました。直後にライコネンがそのオイルに乗りコースアウト。シューマッハにトップの座を譲ることとなりました。

シューマッハはそのままトップを走り続け、優勝を飾りました。ライコネンが2位、ペナルティを受けながらもファステストラップを記録したクルサードが3位に入賞しました。ウィリアムズ勢が表彰台に届かなかったことで、シューマッハのドライバーズチャンピオン獲得が決定しました。

レース後、シューマッハが黄旗区間でライコネンをオーバーテイクしたのではないかという議論が巻き起こりましたが、ライコネンの車が4輪がコース外に出ていたため、ペナルティは科されませんでした。シューマッハはキャリア61勝目を挙げ、ファン・マヌエル・ファンジオと並ぶ5度目のドライバーズチャンピオンに輝いたのです。

ラップリーダー: ファン・パブロ・モントーヤ (30 laps), ミハエル・シューマッハ (14 laps), キミ・ライコネン (21 laps), デビッド・クルサード (7 laps)

フランスグランプリは、2009年から2017年まで開催されなかったため、クルサードのファステストラップは、このサーキットにおける最後の記録となりました。

もう一度検索