2007年の文学

2007年の文学界：ケータイ小説ブームと多様な動向

2007年（平成19年）の日本文学界は、過去の文学に関する新たな発見、各種文学賞の発表、そして現代ならではの文学形態の台頭など、多様な出来事が展開された一年でした。特に、それまで一部で親しまれていた「ケータイ小説」が、社会現象と評されるほどの大きなムーブメントを巻き起こしたことが、この年の文学シーンを特徴づける出来事として挙げられます。

ケータイ小説の社会現象化

2007年の文学界で最も注目を集めたのは、携帯電話のインターネット機能を通じて発表される「ケータイ小説」の爆発的な流行です。主に10代から20代のアマチュア作家たちが執筆し、読者も同年代を中心とするこのジャンルは、瞬く間に広がりを見せました。従来のオンライン小説と同様、インターネット上の投稿サイトで人気を集めた作品の多くが、大手出版社によって書籍化され、ベストセラーとなるケースも少なくありませんでした。これは、文学の新たな担い手と読者層、そして流通形態の多様化を示す象徴的な現象と言えるでしょう。

文学賞の動向

年間を通じて、主要な文学賞が発表されました。

芥川賞・直木賞では、第136回（2006年下半期）の芥川賞に青山七恵氏の『ひとり日和』が選ばれましたが、直木賞は該当作なしという結果になりました。続く第137回（2007年上半期）では、芥川賞を諏訪哲史氏の『アサッテの人』が、直木賞を松井今朝子氏の『吉原手引草』がそれぞれ受賞しました。

また、2004年に創設され、書店員が「一番売りたい本」を選ぶユニークな賞として注目度を高めていた本屋大賞の第4回は、佐藤多佳子氏の青春小説『一瞬の風になれ』が受賞しました。この他にも、日本推理作家協会賞、野間文芸賞、谷崎潤一郎賞、吉川英治文学賞など、様々な分野で優れた作品や作家が顕彰されました。

注目の出来事と出版

この年には、文豪・谷崎潤一郎が佐藤春夫に宛てた書簡が発見されるという文学史的なニュースがありました。特に、いわゆる「細君譲渡事件」の後に、離婚した妻に宛てた手紙が見つかったことは初めてのことであり、関係者の間で大きな関心を集めました。

出版界では、既に挙げた文学賞受賞作に加え、多くの話題作が刊行されました。小説分野では、小川洋子氏の『夜明けの縁をさ迷う人々』、角田光代氏の『八日目の蝉』、桜庭一樹氏の『私の男』、重松清氏の『青い鳥』、宮部みゆき氏の『楽園』、吉田修一氏の『悪人』などが読まれました。また、村上春樹氏によるレイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』の新訳も話題となりました。小説以外でも、内田樹氏、岸本佐知子氏、福岡伸一氏、村上春樹氏などの作品が注目を集めました。

文学界を去った人々

2007年には、国内外で多くの著名な文学関係者が惜しまれつつもこの世を去りました。国内では、芥川賞作家の高橋揆一郎氏、哲学者の池田晶子氏、作家の島尾ミホ氏、小田実氏、服部まゆみ氏などが逝去されました。海外に目を向ければ、サスペンス小説の大家シドニー・シェルダン氏、アメリカ文学を代表するカート・ヴォネガット氏、ノーマン・メイラー氏、児童文学作家のマデレイン・レングル氏など、世界的に知られる作家たちが亡くなりました。彼らが残した作品は、今後も多くの読者に読み継がれていくことでしょう。

2007年は、伝統的な文学の継承とともに、新たなメディアが生み出す文学の形態が大きな存在感を示した、文学史における転換点とも言える一年でした。
一年でした。

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