2012年南アフリカ空軍C-47TP墜落事故

2012年南アフリカ空軍C-47TP墜落事故の概要

2012年12月5日、南アフリカ空軍所属のC-47TP輸送機が、ドラケンスバーグ山脈のジャイアンツ・キャッスル付近に墜落し、乗員乗客11名全員が死亡するという痛ましい事故が発生しました。

事故機について

事故を起こした機体は、C-47A型機を大幅に改修したC-47TP型機です。この改修では、エンジンがプラット・アンド・ホイットニー・カナダ製のPT6A-65ターボプロップエンジンに換装されたほか、胴体の延長、主翼構造の強化などが施されています。

元々は1944年に製造され、アメリカ陸軍航空軍に配備された機体でしたが、その後イギリス空軍を経て、南アフリカ空軍に引き渡されました。事故当時は、ケープタウンのエイステールプラート空軍基地に所属する第35飛行隊に配備されていました。

第35飛行隊は、海洋監視、輸送、偵察、電子戦など、多岐にわたる任務を担っており、1991年から1994年にかけて、C-47型機からC-47TP型機への更新を進めていました。事故機は、2006年に南アフリカ国防軍が国際連合コンゴ民主共和国安定化ミッションに参加した際、ゴマで撮影された記録も残っています。また、2012年には、南アフリカ空軍の曲技飛行隊「シルバー・ファルコンズ」のサポート機として運用され、同隊と同様の塗装が施されていました。

事故の経緯

事故機には、乗員6名と同乗者5名の計11名が搭乗していました。午前7時45分にプレトリアのウォータークルーフ空軍基地を離陸し、ウムタタのウムタタ空港へ向かう予定でした。到着予定時刻は午前10時でしたが、9時45分に消息を絶ちました。

消息を絶つ直前、ジャイアンツ・キャッスル上空から、視界不良のため高度11,000フィート（約3,350メートル）で計器飛行状態にある旨の通信がありました。

到着予定時刻を過ぎても到着しなかったため、空軍は捜索を開始しましたが、当時の気象状態は非常に悪く、悪天候によりヘリコプターの運用にも支障が生じ、捜索は一時中断されました。

翌12月6日の朝、機体はクワズール・ナタール州北西部のレディスミス近郊、ジャイアンツ・キャッスルで発見されましたが、搭乗者全員の死亡が確認されました。

12月19日には、ウォータークルーフ空軍基地で追悼式が執り行われ、遺体は遺族に引き渡されました。2013年5月19日には、墜落現場に慰霊碑が設置されています。

事故後の調査と影響

事故当時、ネルソン・マンデラ元大統領が療養していたクヌへの医療チームが利用するルートであったため、犠牲者がマンデラの医療チームではないかという憶測も流れましたが、後に否定されました。同乗者は、マンデラの自宅で要人警護を担当するチームであったことが判明しています。

事故原因は特定されていませんが、悪天候が有力視されており、南アフリカ国防軍による調査が進められています。当初、調査は民間航空局が主導する予定でしたが、能力不足を理由に軍からの反対があり、最終的に軍主導で調査が行われることになりました。

この事故は、南アフリカ空軍にとって大きな痛手であり、安全管理体制の見直しや、老朽化した機材の更新など、様々な課題が浮き彫りになりました。

もう一度検索