2014年長崎県知事選挙

2014年長崎県知事選挙

2014年（平成26年）2月2日に投開票が行われた長崎県知事を選出するための選挙は、現職の中村法道氏と共産党公認候補の原口敏彦氏による一騎打ちという、異例の構図となりました。現職の中村氏は、この選挙で2期目の当選を目指しました。対する原口氏は、共産党県書記長として、長年続いた県政への変革を訴えました。

この選挙の最大の特徴は、主要な政治勢力が現職の中村氏を幅広く支援する体制が敷かれたことです。通常、知事選挙では与野党の対立構造が明確になることが多いですが、この選挙では様相が大きく異なりました。政権を担う自民党と公明党は、前回選挙から支援を強化し、今回は中村氏への全面的な推薦を決定。さらに、前回選挙で中村氏と対立する候補を擁立していた野党第一党の民主党までもが、前年の参議院選挙での厳しい結果を受け、独自候補の擁立を断念。党の長崎県連が中村氏への支持を表明しました。これにより、自民党、公明党、民主党という通常は協力関係にない主要政党が、揃って現職候補を支持するという極めて珍しい「相乗り」構図が生まれました。加えて、自民党の強力な支持基盤である県農政連や、民主党の主要な支持母体である連合長崎といった主要団体も中村氏を推薦しました。一方、日本維新の会、みんなの党、結いの党、生活の党、社民党などの他の政党は、特定の候補者を推薦せず、所属議員や党員の判断に任せる自主投票としました。このように、前回選挙で7人の候補が争う混戦だった状況から一変し、今回は主要な政治勢力が現職を支える中で、共産党公認候補が唯一対抗するというシンプルな対立構造となりました。

選挙戦を通じて有権者に問われた主な論点は、長崎県にとって長年の懸案事項である諫早湾干拓事業への対応、そして1期4年間の現職・中村県政に対する評価でした。また、県内に存在する原子力発電所の将来や、建設が進められている石木ダムの問題なども争点として取り上げられました。特に諫早湾干拓事業に関しては、中村氏が潮受け堤防排水門の開門に反対する姿勢を示したのに対し、原口氏は開門を求める立場を明確にするなど、両候補の間で政策的な対立軸が示されました。原口氏は、幅広い政党からの支援を受ける中村県政を「自民党の意向に沿うばかりだ」と批判し、県民の声を聞く県政への転換を強く訴えました。

選挙は2014年1月16日に告示され、立候補の届け出が締め切られた結果、中村氏と原口氏の2名のみが立候補し、事前の予想通り一騎打ちの選挙戦に入りました。その後、2月2日の投開票日に向けて選挙活動が展開されました。投票は当日午前7時から午後8時まで県内各地で行われました。加えて、選挙期間中の1月17日から2月1日までの間に期日前投票が設けられていたほか、一部の自治体（長崎市、佐世保市、五島市、西海市、小値賀町）では2月1日に投票を締め切る繰り上げ投票が実施されました。この知事選挙と同じ日には、長崎県議会議員補欠選挙や、任期満了に伴う松浦市長選挙、松浦市議会議員選挙も同時に行われました。

投開票の結果、今回の長崎県知事選挙の投票率は40.72%という過去最低の記録となりました。これは、過去最低だった2002年の投票率をさらに約9ポイント下回り、前回2010年の選挙の投票率（60.08%）からは約20ポイントも大幅に低下したことを意味します。投票日当日の有権者数は115万4002人でしたが、実際に投票を行ったのは46万9857人に留まりました。

選挙戦を終始優位に進めたのは、自民党、公明党、民主党といった主要政党、そして県農政連や連合長崎などの主要団体から幅広い推薦・支持を受けた現職の中村氏でした。これらの強力な組織票に加え、特定の政党を支持しない無党派層からの票も着実に積み重ね、盤石な選挙態勢を築き上げました。一方、共産党公認の原口氏は、中村県政への批判や、諫早湾干拓事業の開門問題などで現職との対立点を強調し、県政改革や現職に対する不満を持つ有権者への浸透を目指しましたが、中村氏の盤石な支持基盤を切り崩すには至りませんでした。結果として、現職の中村法道氏が挑戦者の原口敏彦氏を大差で下し、長崎県知事として2期目の当選を果たしました。

この選挙結果は、主要政党が一致して現職を支援するという構図が、現職候補の勝利を確実なものとした反面、有権者にとっての選択肢が限られた形となり、結果的に過去最低という記録的な低投票率につながったことを示唆しています。重要な争点があったにも関わらず、選挙への関心が十分に高まらなかった背景には、候補者間の実質的な競争が乏しかったという側面もあったと考えられます。

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