2015年ベネズエラ国民議会選挙

2015年ベネズエラ議会選挙：歴史的転換点

2015年12月6日、ベネズエラで議会選挙が実施されました。この選挙は、1999年憲法下で4回目の議会選挙であり、ウゴ・チャベス大統領の死去後初めての選挙として、国内外から大きな注目を集めました。

選挙前の状況：社会の混乱と政治的緊張

2014年以降、ベネズエラは慢性的なハイパーインフレ、暴力、物資不足に苦しんでおり、国民の間で不満が高まっていました。国内各地で抗議行動やデモが頻発し、一部は暴力的な衝突に発展。政府は、これらの抗議活動を「ファシスト」や外国勢力による陰謀であると非難し、野党指導者への圧力を強めていました。

選挙制度：小選挙区比例代表並立制

ベネズエラ議会は一院制で、167議席が小選挙区比例代表並立制によって選出されます。具体的には、113議席が87選挙区の小選挙区制で、51議席が23州と首都圏を単位とする厳正拘束名簿式比例代表制（ドント方式）で選出されます。さらに、先住民枠として3議席が設けられています。

選挙の経過：公平性への懸念

選挙の実施前から、その公平性と信頼性に対する深刻な懸念が表明されていました。米州機構（OAS）のルイス・アルマグロ事務総長は、選挙プロセスを公然と非難し、与党PSUVが公共資産の浪費や不正な投票用紙の作成など、不当な優位性を利用していると指摘。また、野党政治家の資格剥奪が相次いでいることについても、強い懸念を示しました。

選挙結果：与党大敗、野党が過半数獲得

選挙の結果、与党PSUVはわずか55議席しか獲得できず、1999年以来初めて議会の支配権を失いました。一方、野党連合MUDは109議席に加え、先住民枠3議席を合わせて112議席を獲得し、過半数を制しました。MUDの総得票数は770万票に達し、2010年の選挙から240万票増加。ベネズエラの選挙史上最多得票を記録しました。

選挙後の反応：国内外の動揺

国内の反応

MUDの勝利が伝えられると、首都カラカスでは歓喜の声と花火が上がりました。マドゥロ大統領は敗北を認め、民主主義と憲法が勝利を収めたと述べました。MUDのリーダーであるヘスス・トレアルバは、「国は変化を望んでおり、その変化は今日始まっている」と支持者に語りかけました。野党の有力政治家であるエンリケ・カプリレス・ラドンスキーは、「ベネズエラが勝ちました。それは不可逆的です」とコメントしました。

しかし、選挙から1週間後、マドゥロ大統領は「すべての権力を議会に与える」と称する「国民議会」を創設。これは、野党が支配する議会の権限を制限しようとする試みであると批判され、ベネズエラの政治的混乱と二極化をさらに悪化させる可能性が指摘されています。

国際的な反応

選挙結果を受け、ベネズエラの債券価格は上昇しました。Exotix証券のアナリストは、「世論調査は勝利を示唆していたが、それが議席につながるかどうかは別の問題だった。（政府は）結果を受け入れたようだ」と分析しました。

アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領は、ベネズエラ政府が民主主義を尊重しないことを理由に、メルコスールからの排除を要請。マドゥロ大統領が敗北を認めたことで、この計画は一旦棚上げされましたが、2016年12月1日、ベネズエラはメルコスールから資格停止処分を受けました。

2015年のベネズエラ議会選挙は、ベネズエラの政治史における重要な転換点となりました。しかし、選挙後の政治的混乱と経済危機は深刻化の一途をたどり、ベネズエラは依然として困難な状況に直面しています。

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