2022年の
ロシアによる
ウクライナ侵攻後、
ベラルーシと
ロシアでは、戦争に反対するパルチザン運動が活発化した。この運動は、
ウクライナでの戦争を止めることを目的とし、
ベラルーシの
アレクサンドル・ルカシェンコ政権と
ロシアの
ウラジーミル・プーチン政権、両国の軍隊、そして戦争を支持する民間人を標的としている。
当局の建物と戦争支持者への攻撃
パルチザン運動は、当局の建物や戦争を支持する個人への攻撃を特徴とする。具体的な事例を以下に示す。
警察署への放火: 2022年3月7日までに、
スモレンスクと
クラスノヤルスクで警察署への放火事件が発生した。
軍入隊事務所への攻撃: 2022年7月5日時点で、軍入隊事務所に対する攻撃が少なくとも23件記録されており、そのうち20件は放火によるものだった。これらの放火事件は、単一の組織的な運動によるものではなく、極左から極右まで、幅広いグループが関与している。また、これらの運動とは無関係な個人による犯行も発生している。
戦争支持者の車両への放火: 戦争を支持する「Z」の記章を掲げた民間車両も放火の対象となった。2022年8月27日には、モスクワで、エフゲニア・ベロヴァという女性が、国家秘密保護サービスに勤務するエフゲニー・セクレタレフのBMW X6に放火したと報じられた。彼女は戦争に反対する立場を表明しており、精神神経クリニックの患者であったという。
鉄道戦争
鉄道インフラは、パルチザン運動の主要な標的となっている。
ベラルーシと
ロシアの両国で、鉄道に対する妨害活動が行われている。
2022年2月、
ベラルーシでは鉄道戦争が活発化した。信号設備の破壊や鉄道線路の封鎖により、
ベラルーシ鉄道の一部の支線で業務が中断された。
ロシアでは、「アナルコ共産主義者の戦闘組織」(BOAK)と「貨車を止めろ」運動が、鉄道インフラに対する妨害活動を主導している。
BOAKの活動: BOAKは、モスクワ近郊での線路の解体や鉄道妨害行為、セルタワーへの放火、戦争支持者の車両への放火などを行った。BOAKの活動は、
ベラルーシのパルチザンの行動に触発されたものだとされている。
*
「貨車を止めろ」運動の活動: 「貨車を止めろ」運動は、
アムール州、
トヴェリ、
クラスノヤルスク、
マハチカラなどで貨物列車の脱線事故を引き起こした。この運動の活動家は、
ロシア領土の広範囲で活動している。
ダリア・ドゥギナの暗殺と国民共和国軍(NRA)のマニフェスト
2022年8月21日、
ダリア・ドゥギナが車両爆弾によって暗殺された。この暗殺事件は、彼女の父である
アレクサンドル・ドゥーギンの殺害も意図していたと広く考えられている。ドゥーギナ親子は、
民族ボルシェヴィズムを支持し、
ウクライナ戦争を正当化する発言をしていた。
元
ロシア国家院議員のイリヤ・ポノマリョフは、
ロシア国内で活動するパルチザン組織「国民共和国軍」(NRA)がドゥギナ暗殺の背後にいると主張した。ポノマリョフは、この事件を「画期的」と述べ、
ロシア国内のパルチザンが更なる攻撃を行う準備ができていると述べた。
NRAの存在への疑問
しかし、NRAの責任と存在そのものに対する疑問も提起されている。ロイターは、「ポノマリョフの主張とグループの存在は独立して検証できなかった」と報じている。
ロシア連邦保安庁(FSB)は、犯人を
ウクライナ人の女性であるとし、
ウクライナの治安当局と関連のある「アゾフ連隊」のメンバーであると発表した。
ポノマリョフを非難する亡命者
ポノマリョフの主張の真偽にかかわらず、政権に対する武力行使を支持したことで、反プーチン亡命グループの一部からは批判の声も上がっている。これらのグループは、ポノマリョフが「
ロシア領土へのテロ攻撃を呼びかけた」として非難し、ドゥギナが「民間人」であった点を強調している。
当局の反応
ロシア当局は、鉄道のセキュリティ対策を強化することを余儀なくされた。
ベラルーシでは、テロ行為を試みた場合に死刑を科せる法律が施行された。パルチザン運動のテレグラムチャンネルやウェブサイトは、
ロシア当局によってブロックされたり、罰金を科されたりしている。
まとめ
ベラルーシと
ロシアにおけるパルチザン運動は、
ウクライナ戦争に反対する幅広い層の人々によって支持されている。その活動は、当局や戦争を支持する個人への攻撃、鉄道インフラへの妨害活動など、多岐にわたる。これらの運動は、
ロシアと
ベラルーシの政権に大きな影響を与えており、今後の動向が注目される。
パルチザン運動の活動は、両国の社会情勢を大きく揺るがし、政権に対する不満の表れとも言える。今後の展開次第では、さらに大規模な抵抗運動へと発展する可能性も秘めている。