2M1207

2M1207

2M1207は、地球からおよそ53パーセク（約173光年）離れたケンタウルス座の方向にある、比較的若い褐色矮星です。この天体システムが天文学界で特に注目される理由は、その周囲を公転する伴星2M1207bが、太陽系外で初めて直接撮影された可能性のある惑星質量天体とされているためです。また、褐色矮星の周りにこのような伴星が見つかったのも初めての事例でした。

発見と名称

2M1207は、近赤外線を用いた全天観測プロジェクト「2MASS (Two Micron All-Sky Survey)」によって初めてカタログ化されたため、その名称が「2M」で始まります。このサーベイが、目に見えない赤外線で暗い天体を捉える上で重要な役割を果たしました。

主星：2M1207

主星である2M1207は、スペクトル型M8に分類される非常に若い恒星状天体です。その質量は太陽の数パーセント程度、具体的には木星質量の約25倍と推定されており、これは水素核融合を持続させるには足りない質量であり、典型的な褐色矮星の範疇に入ります。この天体は、太陽系から比較的近い場所にある若い星の集団である「うみへび座TWアソシエーション」の一員と考えられています。

伴星：2M1207b

主星の周りを回る2M1207bは、その質量が木星の3倍から10倍程度と見積もられており、惑星質量を持つ天体である可能性が高いとされています。誕生からあまり時間が経っていないため、自身が発生させる熱によって赤く明るく輝いています。今後数十億年という長い時間をかけて徐々に冷えていくと予想されており、最終的には木星とほぼ同じか、わずかに小さいサイズに収縮すると考えられています。この伴星が、2004年に望遠鏡によって直接その姿を捉えられた最初の系外惑星候補となったことは、その後の系外惑星探査における直接撮像という手法の発展につながる画期的な出来事でした。

距離の測定

天体までの正確な距離を知ることは、その天体の真の明るさや質量などを推定する上で非常に重要です。2M1207までの距離についても、観測技術の進歩と共にその精度が向上しました。初期の光学的な観測では約70パーセクとされていましたが、2005年には運動星団法という手法を用いて約53 ± 6パーセクというより正確な値が得られました。さらに2007年には、三角視差法という最も信頼性の高い方法によって、53 ± 1パーセクという現在のところ最も精密な距離が測定されています。

原始惑星系円盤とジェット

多くの若い星や褐色矮星と同様に、2M1207の周囲にもガスと塵からなる円盤が存在します。これは、天体が誕生する際に周囲の物質が集まって形成される原始惑星系円盤であり、その存在は特定の波長（Hα線、紫外線、赤外線）での観測によって確認されています。このような円盤は、中心天体に物質が降り積もる（降着する）過程で、その天体の極方向から高速の物質流、すなわちジェットを噴出させることがしばしばあります。2M1207においても、2007年にヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡（VLT）を用いた観測で、このジェットが明確に捉えられました。このジェットは約10億キロメートルにも及ぶ長さがあり、秒速数キロメートルという比較的穏やかな速度で宇宙空間に物質を吹き出している様子が観測されています。

2M1207システムの研究は、褐色矮星という恒星と惑星の中間に位置する天体の理解を深めるとともに、どのように惑星が形成されるのか、特に太陽系とは異なる環境での惑星形成過程を知る上で、重要な役割を果たしています。

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